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title escape page No. 001
「ジェイドさん!お願いがあります」
ドアを開けるなり、に駆け寄られてしまった
ジェイド。
本日のデザートのリクエストを聞きに来たのに、違う
リクエストを聞く羽目になった。
「?今週はもう二回目だよ。週末には行けるんだから」
「でっ、でも・・・何となくなんですけど、今日だともっと楽しい気が
するんです」
ジェイドとの身長差はかなりのものだ。
必然的にジェイドにしがみつくと見上げるしかない。
また、その見上げられる時の表情が好きなジェイドにとっては、
必殺技を仕掛けられた状態。
「・・・わかったよ。もう抜け出す支度まで出来ているようだしね」
「はい!きっと・・・皆が集まってますよ!」
すでに宇宙の女王の正装ではない。
普段着で待ち構えていたの準備のよさには苦笑い
するしかなかった。
二人で聖地へやって来た。
聖地の時間とアルカディアの時間には違いがある。
今は無理に同じ時を刻ませている状態だ。
これからの長い年月を考えれば、出来るだけかつての仲間と過ごし
たいというの願いを、宇宙の意思が聞き届けたから
こそ実現可能になった。
想像以上に女王としての力があるが政務に要する
時間はそうかからなく、週末にだけアルカディアへ戻れる約束が
度々破られていた。
「さ!着いたよ」
軽々と片腕でを抱いたままで、陽だまり邸の敷地で
一番大きな木の下へと姿を現すジェイドと。
目印にもってこいのこの場所へ抜け道を作ったのだ。
「そぉ〜っと行って、皆さんを驚かせましょう?」
「いや・・・それは無理じゃないかな?もう見つかったみたいだ」
二人が降り立つ場所で先に待ち受けていたヒュウガ。
振り返ったが声を上げた。
「きゃっ!ごめんなさい、気づかなくて。お久しぶりです、ヒュウガ
さん」
「いや・・・一昨日会った」
相変わらずそっけない返事だが、その瞳はとても優しく、笑いを
堪えているのが伝わってくる。
「だって・・・その・・・毎日よりは少ないから・・・・・・」
今週に入って、いよいよ一日おきにやって来る女王陛下。
ニクスの予想は大当たりだ。
『この分ですと、次は明後日には会えそうですね』
『はあ?あいつ、女王やってんだから無理だろう』
「そうだな。久しぶりだ」
ヒュウガの返事に安堵の溜息を吐くと、
「ジェイドさん。あの・・・降ろして下さい・・・・・・」
抱えられたままの自分の姿を思い出し、抱えている人物へ話しかける。
「いいよ、このままで。ほら、邸までまだまだある」
要求は無視され、邸を目指して歩き出されてしまった。
「よくいらしてくださいましたね、。ジェイド」
「よ!もうすぐベルナールも来るぜ」
早々とティータイムを過ごしていたらしいニクスとレインが迎えて
くれた。
玄関の方で音がして、程なくベルナールも姿を見せる。
「久しぶりだね、。ニクスさんに招待いただいて来たんだよ」
宇宙の女王になっても、ベルナールには幼い時のイメージのままらしい。
彼からのお土産は、ハチミツ味のビスケットだ。
「ありがとう、兄さん」
しっかり受け取ると、楽しいおしゃべりが始まる。
陽だまり邸は、すべてが最後の戦いの前のままだ。
週末は泊まりにで帰ってくるジェイドとのために、
誰もが休みが取れるよう合わせていた。
いつでも帰れる場所を───
かつてのオーブハンターの仲間たちの気持ちはひとつだ。
そして、週末に密かにイベントの準備を進めている。
戦いのどさくさと、その後の混乱で何もなされていない二人のための
イベントの計画が秘密裏に進行していた。
「今度来る時は、向こうでお菓子を焼いてからに・・・・・・」
「。それではこちらへ来るのが知られてしまうよ?」
こっそり到着して、こちらでお菓子を作ろうとしていたのに、先に
待ち受けられてしまってはする事がない。
しかし、聖地の宮殿では確かにバレてしまうだろう。
ケーキを頬張りながら、が項垂れる。
「そう・・・ですよね。帰ったらまた叱られちゃうんですよね」
聖地には女王の仕事を補佐する補佐官他、生活面での使用人まで
揃えられている。
が恐れているのは、補佐官のレディアスと、メイド頭の
クラウディアである。
「馬鹿だな〜、お前は。バレないように来いよ」
「だって・・・抜け出す時は見つからない予定なんですもの」
抜け出す時から見つかっているのにジェイドは気づいている。
の身に危険がなければいいと、ひとりでない時は
見逃してくれているのだ。
『脱走については多少は大目に見ますが、先日のようにおひとりの
時は、命に代えてもお止めします』
脱走しようとしたを捕獲したあと、ジェイドの元へ
レディアスがやって来ていった言葉だ。
「この前なんて、窓から抜け出そうとしたら見つかってね?クラウディア
さんにものすっごく叱られてしまったの。レディーがする事ではないって。
ドアを見張られていて、他に出口がなかったんですもの、仕方ないわよね?」
同意を求める相手がレインでは、当然賛成されてしまう。
「。ひとつ・・・知恵を授けましょう。抜け出すのではなく、
堂々とこちらへ来られる用事を作ればいいのです。そうでしょう?」
「あっ・・・・・・」
年の功というべきか、も気づかなかった視点だ。
「そうですね・・・次にお見えの時は、補佐官殿もご一緒にどうですか?
私たちもご挨拶をしたいのですが、こちらからは聖地へ伺えませんから」
実に話の方向を上手くリードするニクス。
「それじゃあ・・・こういうのはどうかな?毎週女王陛下のコラム欄を
新聞に用意するよ。そのインタビューに答えるのと、記事の内容確認を
していただく必要があるというならば、公式の仕事にならないかな?」
ベルナールの申し出に、目を輝かせる。
週末より一日多く確実に帰れる日が増える。
「そういうのでいいのか。だったら、財団の方でも女王の力を効率よく
利用する研究をしたいとかいえばいいんじゃないか?」
レインが指を鳴らす。
「ならば、銀の大樹もそうだ。女王陛下の視察という名目もある」
誰もがの公式の仕事を考える。
そのうちにあまりに多くの用事で並べ立てられ、の目が
丸くなる。
「私・・・聖地よりこちらにいた方がいいのかしら?」
なんとこちらで出来る事は多かったのだろうと、改めて女王の力の
必要性を認識する。
「安定の力をすべてに注ぐのは聖地でしか出来ないからね。ほとんど
自由にこちらへ来ていいんだって事でいいんじゃないのかな?」
ジェイドが首を傾げているの手の甲を軽く叩く。
「そうですよね!これからはもっとたくさんこちらへ帰れると思います!」
ニクスが頷く。
レインは肩をすくめてお茶を口へ含む。
ヒュウガやベルナールは、口元に笑みを浮かべている。
(帰れるって・・・ここがの家なんだね・・・・・・)
ジェイドにはコズという故郷がある。
には、幼い時に過ごした土地はあっても家はないのだ。
ベルナールの実家も売り払われてしまっており、そういった意味では
陽だまり邸が故郷なのだろう。
「次は金曜日の晩には帰れそうですか?」
「え〜っと・・・レディアスさんに相談して、一緒に来てもらいますね」
さっそく補佐官に許可を得ようという考えらしい。
「では、補佐官殿の部屋も用意して待ってますよ」
金曜日は明後日。何も知らぬはのみ───
2006.11.23
ジェイドはアンジェに「No」は言えないとイイなv
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