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title Lunch Time page No. 008
「・・・これがピクニック?」
「そう、ピクニック!食うぞ〜〜!!!」
バスケットから取り出された料理の多さに驚くベルナール。
対してレインにとってはいつもの事。
さっさと食べたい料理へと手を伸ばす。
「・・・バスケットが少し大きいなとは思っていたんです」
「そうでしたか。ジェイドが持つと小さく見えますからね」
ニクスもようやくベルナールの目が見開いている理由を覚る。
ピクニックシートに置かれてから、そのバスケットの大きさに
首を傾げた。
人数も多いしとそう深く考えてはおらず、よもやパーティーの
ようになるとは想像すらしていなかった。
まったくもって普段通りの食器に茶器を広げようとは───
場所が変わっただけの昼食会。
誰もが何も言わないという事は、これが普通ということだ。
(ピクニックって・・・並みのパーティーより豪華だなぁ)
記者としてパーティーの取材にも行ったことはある。
パーティーとは名ばかりで、無理をしたのであろうという
類もいくつか経験した。
そんなパーティに対してこちらはピクニックだという。
「あの・・・苦手なお料理でした?」
料理に手をつけないベルナールを心配して、が
ベルナールの顔を覗き込む。
「・・・あははははっ!こんなに豪華なピクニックは初めてで
少し驚いただけだよ。いつもこんな風に?」
差し出された皿を手に取るものの、笑いが止まらない。
「えっと・・・レインもジェイドさんもヒュウガさんも、とっても
たくさん食べるから。帰りはいつもバスケット、空っぽなの」
が嬉しそうに料理をベルナールの皿へと
取り分ける。
「だから・・・色々なお料理の練習できちゃうし。感想だって、
レインなんて煩いんですよ?」
もピクニックを知らなかったのだろう。
最初にこのピクニックを経験しては、ベルナールとのいつかの
ピクニック・ランチをどう思っていたのだろうか。
「・・・・・・」
「こっ、これ・・・私が作ったの。その・・・片手で食べられる
のが好きって・・・だから・・・・・・」
もあの時のランチを覚えていてくれたのだ。
ロールサンドは彼女なりの工夫と気遣い。
(華美かどうかは問題じゃないな・・・僕としたことが)
「ありがとう、。いただくよ」
ベルナールが食べる様子を、瞬きもせずに見つめている。
「さすがにそこまで見つめられると・・・どうしようかな?」
ちょこんとの鼻先へ指で触れると、
「ひゃああああ!ちっ、ちが・・・・・・」
真っ赤になって両手で顔を覆ってしまった。
「・・・お前バカだろ。食わないとなくなるぞ〜」
レインがいつものように突き放していながらも、が
顔を上げやすいようにツッコミをする。
「レイン君。食事のマナーは周囲とペースをあわせ、和やかにですよ。
言葉遣いに気をつけて下さい」
先生のように諭しつつ、ニクスはコーヒーをベルナールへと
差し出した。
「ありがとうございます。、ごめんよ?驚かせてしまったかな」
コーヒーを受け取ると、の頭をふわりと撫でる。
すると、が涙目で顔を上げた。
「・・・はしたないことしちゃったから。その・・・レディらしく
ないことを・・・・・・」
他人の食事を凝視するなどマナー違反もいいところだ。
「ああ。そんな風に思ってたの?てっきり僕を見つめてくれているんだと
思って嬉しかったんだけれど。自惚れすぎだったかな」
こちらもとぼけてソーサーを手に持ちながらコーヒーを一口。
「きゃああ!そんな、でも、見たいけど・・・見るのは・・・・・・」
赤くなったり青くなったり忙しい。
をからかうのは仲間たちだけではなくなった。
「見たいんだって。正直だよね」
仔犬をかまいつつ、ヒュウガに話しかけるジェイド。
「見ればいいといいたいところだが・・・・・・難しそうだ」
がベルナールの顔を見られる機会など、そうそう
考えられない。
彼の人物がより先に眠るとも起きるとも考えられない。
残すは目覚めている時だが、視線を受け止めきれるだけの余裕が
にはないだろう。
こちらの二人は、一応食事の給仕をしているフリをして背を向けて
笑う事にした。
に気づかれないように───
「・・・っ!」
「ジェイド。舌を噛まぬ程度に笑いを堪えるんだな。そのように肩を
揺らすのは・・・・・・」
は、ベルナールに食べ物を取り分けて、今度は横目で
皿の減り具合を確認しながら盗み見するようにベルナールを見ている。
あまりにわかり易すぎる行動に、ジェイドの我慢も限界。
「それはそうなんだけれど・・・さ。可愛いよね、は」
再びの様子を窺い、忙しく動く表情を楽しむ。
という女の子は、よく言えば何にでも真剣。
悪く言えば自分の事が忘れられている。
の傾いている皿へ、ベルナールが手を添えていた。
「。零れてしまうよ?」
「あれれ?はい。あの・・・・・・」
手と手が触れ合う。
の頭から湯気が見えた者、数名。
「シュークリームはが作ったんだよね?お願いできるかな」
食事はそこそこにし、が張り切って作ったという
本日のデザートを強請る。
「あの・・・お食事は?」
「うん。食事はもうたくさん頂いたから。コーヒーのおかわりも
お願いしようかな」
実際、普段から食事に頓着したことがないので大量に食べなくとも
問題はない。
「はい!どうぞ」
「ありがとう」
ままごとのような遣り取りが続くのを、見て見ぬふり、けれど
しっかり見ている仲間たち。
「・・・自分の旦那様なのに面白いなぁ、は」
「だからだろう。それにしても、あのように嬉しそうな顔で見られて
いては普通なら食べ難いだろうに」
はベルナールだけを見つめているので、仲間たちが
を見ている事にまったく気づいていない。
「そろそろレインが何か言いそうだ」
「ニクスもいるから心配はないだろうが・・・・・・」
予想通りにレインがをからかいだした。
「はベルナールに色々食べさせてるけどさ、自分で味見
したのか?」
「えっ?味見・・・・・・したけど・・・・・・」
するにはしたのだ。
シュークリームもカスタードなど、部分的にはしている。
迷いがある返事にレインの口の端が上がる。
「・・・食べさせてもらえば?」
「ああ、そうか。ごめんよ、。食べてみる?」
皿からひとつシュークリームを手に取り、へ向けて
差し出すベルナール。
「ひゃ・・・だだだ・・・・・・」
「どうぞ?とても美味しいよ」
微笑みながら美味しいといわれては、食べない理由はない。
おずおずと口を開き、ベルナールの手ずから食べた。
「あ・・・・・・甘味が足りなかったかしら・・・・・・」
「僕には丁度いいけどなぁ・・・・・・うん」
が齧った残りのシュークリームを食べられてしまい、
本日何度目かわからない赤面状態の。
必死に頬を手で押さえて熱を冷まそうとしている。
「・・・オレはこっちのふにゃ〜っとしたのが美味い。
ストロベリークリームの」
酸味がうまい具合に甘味とバランスしている。
どうやらレインの好みは酸味と甘味が混在しているものらしい。
レインの感想を聞きつけ、振り返りながらシュークリームの篭を見た。
「そう?じゃあ・・・あら?いつの間に・・・・・・」
シュークリームはもうひとつも残っていなかった。
誰もがが作ったものから食べているのだから、
無くならないわけがない。
「あはは。食べ損なってしまったね。これをどうぞ」
ベルナールが最後のひとつのシュークリームがのっている自分の
皿を差し出した。
「ううん。大丈夫です。たくさん作ったつもりだったのに驚きました」
「まあ、まあ。半分にしよう。はい」
半分に分けて中が零れないようベルナールがシュークリームを
手渡す。
「うふふ。いつも・・・こうして大きい方のお菓子を私に
くれましたよね。ね?に・・・・・・」
半分ならまだマシで、時には自分の分まですべてくれた優しい
親戚のお兄さんを思い出す。
つい昔の呼び名に戻りそうになった時、
「ちょっと待った!」
「おい!」
「ふう・・・マドモアゼル」
「。そろそろ呼び名を」
ベルナール本人ではなく、オーブハンターの仲間たちから声が
上がり、驚いたの言葉が途切れた。
「私がまとめさせていただきましょう」
ニクスが年長者らしく、へ向き直る。
「。・・・そうですね、週末は意識してベルナールを
名前で呼ぶのはどうでしょう?兄さんと呼んだら・・・二回名前の
呼び直しをしてもらいましょう。どうですか?ベルナール」
ニクスの提案にベルナールが笑い出した。
「あはははは。それだとが大忙しになってしまいますから」
体を折ってまで笑い続けている。
の頬が膨れた。
「呼べますっ!私・・・昨日は頑張って呼んだし、それに、それに
心の中ではちゃんと名前で呼んでいます」
立ち上がって宣言する。
「へえ・・・じゃ、呼んでもらおうか。心の中じゃ聞えないんだ
よなぁ〜〜〜」
手団扇をしながらレインがを見た。
「!!!・・・・・・ベルナール?」
振り返り、名前を呼ぶと、
「どうしたのかな?僕の」
にこりと微笑んで返された。
「・・・ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ベルナールの返事にが一目散に駆けて行く。
「一番性質が悪いよ、ベルナール」
さすがのレインも呆れ顔だ。
ジェイドに至っては、もともとが笑い上戸なのだから止まらない。
「困った旦那様ですね?しかし・・・・・・」
ニクスがヒュウガを見れば頷いている。
「早めに呼び方は直りそうだ」
「有り難い限りですね。間違ったら余分に呼んでもらえる事ですし。
さて。僕は可愛い奥方様を探しに行ってきます」
上着を手に取り、こちらは軽やかに駆け出して行く。
「面白いよな〜、あいつ等」
「こら、こら。レイン君。面白いなんて失礼ですよ」
姿が小さくなるベルナールの先には、が立っている。
「実際、可愛くて面白くて仕方ないんだけどなぁ」
「ジェイド。そうまで笑わずともいいだろうに」
そういうヒュウガの口元も相当笑っていた。
『。懐かしい隠れ鬼をしようか?』
『はい!にいさ・・・あっ・・・・・・』
ベルナールの悪戯は続く───
2007.11.04
からかわれ体質ってありますよねv
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