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title Recipe of dessert page No. 007
「あれれ?上手く・・・いかな・・・・・・」
「そんな無理にしなくても・・・ほらね?」
サンドイッチもいいが、本日はロールサンドにしたかったのだ。
野菜をつめすぎると上手く巻くことが出来ない。
「・・・おにぎりも作りたいし」
「そんなに色々したいんだ。でも、次の機会もあると思うよ?」
さり気なくジェイドに諭されて、が頷いた。
「そうですよね!欲張ったって仕方ないです。兄さ・・・・・・」
「ベルナール・・・だよ?」
同姓に対しては呼び捨てがし易いものだ。
ジェイドが先に名前を言ってみせる。
「・・・あの・・・えっと・・・・・・」
「ベルナール。の旦那様だよ?」
頭ではわかっているつもりでも、どこか慣れていない現実について
他人に言われると今更ながら実感がある。
「うひゃあ!そっ・・・そうなんですけれど・・・そう。そうなの」
手元の野菜へと視線を移し誤魔化そうと必死だ。
「そうだね。それで・・・野菜はコールスローサラダはどう?バスケット
で揺らしてしまっても問題ないしね」
持ち運びをするというのは思わぬ結果を呼び寄せる。
綺麗に詰めても片方によってしまったり、潰れてしまったり等の
リスクを考えると、あまり形を気にしないでいて彩があるお弁当と
いうのがいい。
ジェイドは口も手際も良く動く。
「はベルナールの好きなスイーツをそろそろ作らないと。
ここを出て、お昼には着きたいからね」
バスケットに人数分の食器を詰めたり、やる事はまだまだある。
「そうですよね。じゃあお言葉に甘えさせていただきますね」
まだ頬に残る熱を誤魔化しながら、簡単に食べられるスイーツを
考える。
「形が崩れなくて・・・片手で食べられて・・・美味しくて・・・
何がいいのかしら?」
考えに考えた結果、シュークリームに決まった。
「いいお天気!ピクニックにぴったり」
仲間たちがいるとも気が楽なのかはしゃいでいる。
もしもベルナールと二人にされたら心臓がもたない事だろう。
折角の休日を台無しにするぐらいならば、こちらの方がいい。
仲間たちと戯れているを眺めながら、ニクスと
お茶を飲んでいるベルナール。
余裕があるのではなく、真に大切にしたいからこそ焦らないと
決めている。
「まあ・・・まだまだ二人きりというのは意識しすぎてしまうかも
しれませんね」
「ええ。僕はそういうのは・・・例えば自然に彼女の方から僕の隣に
近づきたいと、そう思ってくれるまではと頭では思っているんです。
それなのにあなた方ときたら随分な悪戯をしでかしてくれました」
何が困ったといって、寝室が一番困ったことだ。
「そうですか。それでも・・・何かを変えたい、変える切欠は
目に見える方がいい場合もありますよ?その証拠に・・・・・・」
が追いかけっこで逃げ込んできたのはベルナールの
ところだ。
「もう走れない〜〜〜」
座っているベルナールの背に背を合わせて座り込む。
「あはは。何もそんなに走らなくても」
「だって〜、あの子が追いかけてくるんですもの。なんとなく」
仔犬がを追いかけてきて、ちゃっかりその膝へと
飛び込んだ。
「きゃっ!もぉ〜、どうして私のところなの?」
嫌いで逃げたわけではなく、楽しくて走っていた。
最初にレインを追いかけていた仔犬は、いつしかだけ
を追いかけ始めて現在に至る。
「たぶん・・・お菓子の匂いがするからかな?髪から」
が座った時にふわりと甘い砂糖の香りがした。
「ええっ?!私から?お菓子の?どうしてわかるの?ジェイドさんも
一緒に作ってたのにぃ」
髪の長さからしての方が香りがするし、同じ追いかける
にしても、より足が遅そうな方を狙うのは動物ならば当たり前に備わって
いる本能だ。
仔犬は鼻を鳴らしながらの胸元へ前足をかけた。
「・・・。こっちへおいで?」
仔犬相手にいささか大人気ないが、を自分の元へ
引き寄せるベルナール。
ところが、は仔犬を抱いたままでベルナールの前で
戸惑っている。
「あっ、あの・・・・・・」
呼ばれれば拒めない。けれど、いきなり子供のようにも恋人のようにも
振る舞うことは出来ない。
どちらの行動も出来ないでいるの気配を察し、
「大丈夫。その子には・・・これがいいと思うよ?」
ベルナールの手にあるのは蜂蜜味のビスケット。
仔犬はの腕から抜け出し、さっさと食べ物に飛びつく辺り、
ちゃっかりしたものだ。
「・・・本当に食べ物が欲しかったんだぁ・・・・・・この子」
仔犬の頭を撫でると煩そうに首を振られてしまい残念がる。
「そうだね。でも、どこかの飼い犬だと思うよ?毛並みはいいし、何より
その首輪が・・・ね?」
言われてから仔犬の首輪に気づいた。
「・・・本当。どこの子かしら?」
無視されてもめげずに仔犬をかまう。
結局のところ、の捕獲に失敗したベルナール。
ニクスが笑いを零した。
「可愛いものには負けてしまうようですね?」
「まあ・・・今の僕ではウサギのぬいぐるみにも劣っていますしね」
ウサギのぬいぐるみの事はオーブハンターの仲間は全員知っている。
追いかけっこから戻ってきたレインたちも二人の会話を聞きつけ笑う。
「負けたか・・・情けないな〜。どうりでノーコメントだよな」
レインがベルナールの背中を背もたれ代わりに座り、ジェイドは
仔犬の為にミルクを用意し、再び遊ぶ方に参加する。
ヒュウガだけが着た時から変わらずに瞑想に耽ったまま。
「レイン君。ウサギのぬいぐるみは王子様からの贈り物ですよ?」
「へ?そんなの知って・・・・・・」
レインが振り返るより早く、がレインを目掛けて小走りに
やって来る。
「レイン!そこは・・・そのぅ・・・私の場所なの!」
照れながらも精一杯の意思表示をする。
レインの方が驚いて寄りかかっていた姿勢を正した。
「あ・・・悪かった・・・な」
膝に手をあて起き上がると、空いているベルナールの隣へ座ろうとする。
「そ、そこもダメっ!」
敷物の上へ急いで座ったために正座でベルナールの隣に逆向きで座る
事になってしまった。
「やれ、やれ。いくら寄りかかりたいといっても、ベルナールの隣は
のものですよ?レイン君は気が利かないですね」
そういうニクスもベルナールの右隣に座っていたりするのだが、今まで
話をしていたという強みがある。
「・・・いいよ。ニクスを背もたれにするし」
肩をすくめて、今度こそとニクスの背後に座る。
「あの・・・ごめんなさい。だって・・・・・・」
真っ赤になって俯く少女に誰もが逆らえない。
「わ〜るかったよ。どういう反応するのか見てみたくてってバレてたケド」
ニクスはわかっていたのだろう。
だからレインを放っておいた。
「えっ?それって・・・・・・」
途端にの顔色は戻り、首を傾げて考え出す。
「僕の奥様は僕を放って仔犬に夢中だったからね?」
ベルナールがへウインクをする。
再びがトマトより赤くなるのに僅か数秒もかからなかった。
「仕方のない人ばかりだね?ホント。お前が嫌じゃなければお昼は
一緒に食べよう」
仔犬を膝へ抱え、仲間の様子を少しはなれて眺めていたジェイドが呟く。
「それこそ仕方のないことだろう。のあの表情を見たくて
からかってしまうのはという気がする」
とろける様なとは上手い表現だと思う。
幸せいっぱいの照れた笑顔は、周囲の者たちをも同じ空気に巻き込む。
「あの・・・今日はシュークリームを作ったんです」
「そうなんだ。案外コーヒーと合うんだよ。知ってた?」
ひとつひとつ丁寧に話す。
それにひとつひとつ穏やかに返事をするベルナール。
「ほんとに?それで・・・硬い皮と・・・柔らかい皮と作って」
「ふうん?僕が知っているのは柔らかい方なのかな?」
がベルナールの食事の好みを知りたくて探りを入れて
いるのはわかっている。
「たぶん・・・そう。それで・・・中のカスタードも工夫して何種類か
作ってみたんです」
「たくさん考えたんだ。大変だった?」
「そんなことなくて・・・えっと・・・・・・少し小さめにして、
たくさん食べられるように・・・・・・」
せっせとベルナールに説明をする。
コーヒーと合うと言ってくれたのだ。
普段から食べているのだろうし、それは嫌いではない証拠でもある。
(よかった・・・シュークリームは好きモノなんだわ)
作ってよかったと胸を撫で下ろしつつ、会話の糸口が掴めずに、
とりあえずはこの話題をせっせと続ける。
(声が・・・聞きたいもの。それに・・・兄さんの事、知りたい)
今更ながら長く離れていたので何も知らないと、事あるごとに
思い知らされる。
そのうちにベルナールが笑い出した。
「にっ・・・兄さん?」
「ご、ごめんっ。だって・・・作り方、覚えてしまいそうで」
「やっ、やだ。私ったら・・・・・・」
まるでままごとの夫婦の様な二人。
「出た・・・天然」
「こら。レイン君。こういう時は聞こえないふりをするのが大人の
態度というものですよ」
「・・・さすがにレシピや作り方はね。らしいけど。それだけ
長く・・・・・・」
「話したかったということだろう。会話の切欠はニクスが作るべき
だっただろうな」
仲間たちが二人を見守る中、青空の下で二人きりになれた
とベルナール。
そろそろお腹がすく時間───
2007.06.10
距離を縮めたいと思い始めたアンジェv
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