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title Good morning! page No. 006
ふと腕に重みを感じてベルナールが覚醒する。
昨晩眠った時の姿勢とは少しばかり変化した状態だと気づく。
やや押しつぶされ気味のウサギのぬいぐるみには申し訳ないが、
体温を求めてが近づいてきたのだとわかる。
(顔が変形して・・・これじゃウサギには見えないなぁ・・・・・・)
相棒の縦に長くなっている顔を見て、つい笑みを零してしまう。
「クスッ・・・・・・後で上下に押せば戻るかな?」
つい声が出てしまったのだろう。
その声に反応したの目蓋が開かれた。
「・・・・・・おはようございます」
「うん。おはよう、僕の奥さん」
名前を呼んでもいいが、それは昔から呼んでいる。
今朝だけは別の呼び方をしたかった。
「・・・・・・・・・・・・ええっ?!」
慌てて起き上がったが辺りを見回している。
「朝食ならジェイドが作ってくれているだろうし。君は何もしなくても
いいと思うんだけど・・・この邸でのルールはまだ僕も詳しくないかな」
放り出されてしまったウサギの顔をさり気なく戻そうと、押しながら
その形を整えつつ現状の説明をするベルナール。
「ひゃあっ!私、寝坊して・・・えっと・・・・・・」
幼い時ならいざ知らず、隣にベルナールがいるのだ。
確かに昨夜は一緒に眠らなくてはならない事態になっていたとしても、
それとこれとは話が別。
「あの、あの・・・私・・・・・・向こうで着替えてきますっ」
レインの弾丸よりも早く、が自分の部屋へと
駆け出していた。
「・・・置いてけぼりだな?相棒」
せっかく顔を整えたのに、すっかりその存在を忘れられているウサギ
の額をつつく。
考えようによっては、今晩もここで眠るから持ち帰らなかったとも
受け取れるのだが、今朝の様子では違うだろう。
とても考えて行動をしているとは言い難い逃げ出しぶり。
「彼女の前で着替える様な無粋な真似は避けますか!」
まだまだ真面目でしっかり者の兄を演じねばならなさそうな自分に
小さな溜息を零しつつ、少しずつ近づいてゆく楽しみに想いを馳せ、
ベッドから起き上がると大きく伸びをしてから着替え始めた。
「やあ、おはようございます。ベルナールと・・・・・・奥方様?」
ニクスが朝食の席で優雅に紅茶を飲みながら、少しだけ遅くなった
二人に微笑みかける。
「おはようございます」
さらりと挨拶をして返すベルナールに反して、
「おっ、おっ、おっ・・・おはよう・・・ございます・・・・・・」
真っ赤になって俯き、ベルナールの背中のシャツを掴む。
「・・・朝から見せつけるなよ。早く座れば?ジェイドが温かいものを
出したいからって時間ぴったりに計ってるから」
珍しく早起きのレインが二人に席を勧める。
単に空腹なだけの早起きだとしても、レインらしい温かい出迎えに
が大きく頷いて席に着く。
「私、今朝は食事の手伝いを休んでしまって・・・・・・」
「いえ、いえ。週末はお手伝いなど気になさらなくて結構ですよ。
もともとそのつもりでこちらの邸での暮らしを勧めたのですから」
ニクスの視線がドアへ移ると、ジェイドとヒュウガが朝食を運んできた。
「おはよう!今朝は特製野菜スープを作ったんだ。だから、冷めたら
もったいないだろう?が心配していたからね?」
軽くウインクをへ投げると、続いてベルナールへと
視線を移すジェイド。
「ベルナールの食生活を。野菜が足りないだろうって」
「ジェイドさんっ!!!」
テーブルに両手をついて即座に立ち上がる。
「・・・ね?今日は野菜中心、栄養満点メニューにしたからね」
手で席に座るよう促がすと、
「秘密にして下さいって・・・・・・」
は潤んだ瞳で力なく席に座った。
「ジェイド。そうからかうものではありませんよ?が
初恋の君の奥方様になられた、おめでたい朝なのですから」
「ニクスさんっ!!!」
今度はニクスの言葉に慌てて立ち上がる。
「お前もいちいち馬鹿正直に反応するなよ。ニクスもだ。ジェイドの
事を言えないだろう?それじゃ。いいから、飯」
レインが軽く肩を竦め、さっさとフォークを手にした。
「レイン君は空腹だと機嫌が悪くなりますからね。いただくとしましょうか」
穏やかな朝日が差す部屋で、のんびりとした朝食をとった。
「本日のご予定は?」
ニクスがベルナールに向かって切り出す。
「ええ。出来れば皆さんとピクニックに行けたら楽しそうだと考えて
いたんです。天気も良さそうだし。何より、僕が外に出たいんですよ。
青空を見上げて昼寝なんて、最高の贅沢だと思いませんか?」
「私がお弁当を作ります!ね?お菓子も作るし、出かけましょう?」
朝食が作れなくて俯きがちだったが嬉しそうに手を叩く。
「では、そうしましょう。それまでは各自自由という事でいいですね?」
ニクスの言葉に全員が頷く。
「お弁当は僕も手伝うからね?がスイーツを作るといいよ」
「はい!頑張りますね」
一番最初に部屋を出たのはとジェイドだ。
「私はどうしましょうか・・・ベルナールはどうしますか?」
わざわざ名前を呼ばれたのだ。
「ええ。僕はニクスさんの紅茶をいただこうかな。急ぎの仕事はないし」
「オレも〜。ここで論文のまとめでもするかな。どうせ書く程はまとまって
ないんだよな。頭の中で少し整理つけないと」
レインもサルーンのお茶会に加わるらしい。
「そうか。俺は少し外で体を鍛えてくる」
ヒュウガはいかにも彼らしく、鍛錬の続きのためにその場を離れた。
「安心しましたよ。さすが初恋の王子様ですね」
「アンタがからかいすぎるからだ。ベルナールも、無理にニクスの相手を
しなくていいんだぜ?」
長いソファーに寝そべり、仰向けで本を読むレイン。
どこで本を読んでもいいだろうに、お茶会に参加してくれたらしい。
「あはは。無理はしてませんよ。ただ・・・王子様というのが気になって」
「でしょうね。の初恋の王子様は貴方らしいですよ?
ベルナール。さすがよくわかっている。をとても大切に
して下さる貴方だから、私たちは見守ろうと思ったんです。そうでなければ
協力などしません」
あっさりと今までの真相を話すニクスに、ベルナールの目が見開かれる。
「ままごとの相手までしてやってたんだって?ポイント高いよな〜、それ。
はその時の約束を覚えていたらしいぜ?王子様の顔は
忘れていたみたいだけどな」
ベルナールと再会し、後にわかった事だ。
の想い出の優しい親戚のお兄さんがベルナールだったと
わかった時に、誰もが納得して頷いたものだ。
『ベルナールさんが兄さんだったんです!あの笑い方、
変わってないのに。
どうして最初に気づかなかったのかしら?』
誰もがに言えなかったの事がひとつだけある。
人は成長するものだ。ましてや男性の成長期前と後では姿形ばかり
でなく、声まで違うだろう。
変わってないと言い切る方に無理がある。
『天然・・・・・・』
『まあ、まあ。気持ちの上では変わっていないってことだよ』
『時と場合によりますね』
『・・・わかっただけでもいいだろう』
せっかくの夢を壊してはならないと、そのままにしておいた仲間たち。
ベルナール自身がその夢を壊す行為をしない事を祈るしかなかった。
「・・・照れますね。ただ、とても大切に思っていたし、これからも大切に
したいというのは変わりません」
「それが聞けて我々も安心しました。今朝ほどもに負担が
ないよう、とても上手く外出の予定を提案して下さって」
ニクスが窓の外へと顔を向ける。
真っ青な空には雲ひとつない。
出来ればベルナールと二人で送り出したかったが、今の
では緊張が増すだけだろう。
仲間たちもいるならば楽しい一日が確約される。
「で?昨夜はどうしたんだよ」
人の悪い笑みを浮かべ、いつのまに起き上がったのかレインが
ベルナールの方を向いて座っている。
「ご期待に添えなくて申し訳ないけれど。いわば僕の我がままで
入籍を早めてしまったのだから、これ以上の負担はかけたくない
からね。ノーコメント!」
両手を上げて口を紡ぐベルナール。
これ以上の質問は無駄なようだ。
「せっかく気を利かせて部屋をひとつにしてやったのに。まあ・・・
いいけどな」
「五月蝿いですよ、レイン君。君はさっさと論文をまとめないと、
また編集者から督促の嵐になりますね」
ニクスの指摘にレインが黙る。
「あはははっ。ここは本当に・・・明るくて。仲間思いの方ばかりで。
いつまでも居たくなってしまう」
「そうして下さい。私には家族は居りませんし・・・にぎやかなのは
大歓迎ですよ。騒々しいのは御免ですが」
こうしてベルナール夫妻の長期居候が決定した。
2007.05.06
お出かけ、お出かけ。デートはお預け(笑)
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