バレバレ は景時に、“面白いもの作ったから、今晩、浜に見に来ない?”と誘われた。 何が行われるのかも聞かずに、返事をしていた。 彼は笑いながら、迎えに来ると言ってくれた。 (「絶対行きます」なんて、いかにも・・・だったよねぇ) は、景時が好きだ。まだ気持ちは伝えていないが。 「期待しててね・・・か。景時さん、よっぽど自信あるんだね」 朔に気づかれるのが怖くて取り繕った。朔はさして興味もないのか、 「さあ、どうかしら。兄上はいつもあんな感じだもの」 と言って肩をすくめた。 (上手く誤魔化せたかな) まだ夜まで時間がある。はこれから何をして時間を潰そうか考えようとした。 すると、朔がいきなり、 「それで?は兄上のことをどう思っているの?」 確信を突いた質問だった。は、恐る恐る朔の方を向いた。 「え?な、何?どうしたの、朔」 質問の内容はわかっているが、上手く言葉がでなかった。 「もしもが兄上を想っているのなら。協力しなきゃね?約束したもの」 朔は、ニッコリと微笑むとの正面に座りなおした。 (に、逃げられないっ) さらに朔は、の手をとると、 「大原で約束したわよね。の恋の応援をするって」 の頭の中では、狭い部屋で手を取り合って座っている自分たちの光景が、 ドラマでも観ているかのように映った。 (この場合、ヒロインは私なのかなぁ?じゃなくて!何考えてるんだろ) は、混乱した頭を落ち着かせるべく、深呼吸をひとつする。 「え〜っと。わかっちゃった?」 は、開き直ってみた。 打ち明けるのは恥かしいが、ここまで言われては誤魔化す方が難しい。 「だって、いつも兄上をみているし。でも・・・本当に兄上なの?」 朔は、まるで景時じゃ駄目だとでもいうような確認ぶりだ。 「ダメ?」 朔が嫌なのかと思って、は訊いてみた。 「そうじゃないの。そう思わせてしまったのなら、ごめんなさい。 でも・・・小心者で、見栄っ張りで、いいかげんな人なのよ?いいの?」 朔は心配顔になっていた。 「景時さんは、格好いいよ。とても優しくて、強い人だよ!!!」 は、きっぱり言い切った。少々声も大きかったかもしれない。 顔も真っ赤になっていた。目に涙まで浮かんできた。 (は、恥かしぃ〜〜) その時、朔の手がの頬に触れた。 「ふふっ。ったら。真っ赤よ?ごめんね、悪気はなかったんだけど・・・・・・」 朔は嬉しくて、たまらなかった。大切な親友が、景時を好きと言ってくれた。 口では、いつも小言ばかり言ってしまうが、景時が心配だった。 景時はいつも嫌な役目を引き受ける人だ。かなり不器用な人だと思う。 (兄上の不器用さに、気がついてくれた人がいる───) 「嬉しいの。でも、二人とものんびりで奥手そうなんだもの。心配だわ」 朔は、の両頬を軽く引っ張った。 「しゃくぅ〜〜〜」 は不満げに名前を呼ぶ。朔はそろりと両手を離した。 「兄上は、押しが弱いっていうか。が頑張らないとね!」 「ええ〜?!それだけ?ちっとも応援になってないよ〜〜」 は、有力情報が得られるかと思っていたので、ガッカリした。 「あら?とても応援しているのよ?だから教えたんじゃないの。 兄上からの告白はないだろうって。兄上は、極端に傷つくのを怖がる人だから」 朔は、幼い頃の兄・景時を思い出していた。周囲に自分を悟られまいとして、 いつも笑っていた。そして兄は、陰陽道の修行へ出された。 「あの兄から答えを引き出せたら、本物だと思うわ」 「そんなぁ〜〜」 は情けない声を出して項垂れた。 二人が恋愛談義をしているうちに、外はもう暗くなっていた。 「朔、ちゃん、そろそろ外が暗くなってきたよ〜?」 景時が、ドカドカと足音を立てながら二人を迎えに来た。 「兄上!どうして、そう、落ち着きがないんですか!」 朔は部屋の襖を開けながら、ピシャリ!と叱りつける。 「ご、ごめんね〜。つい早く見て欲しくてさ!」 「言い訳はいいです!」 朔は両手を腰に当てて、すっかりお小言態勢だった。 景時は、部屋の入口でしょぼんと肩を落とす。 「え〜と・・・でも・・・ほかの皆も集まってくれたからさ。早く行こう?」 景時は、様子を窺うようにに視線を合わせた。 「そうですね、早く行きましょう!」 は朔の左手をとり、 「行こう、朔!」 と、小言を中断させる。 「仕方ないわね」 朔は続きを諦めたようだ。 「そうこなくっちゃ!行こ〜〜!」 景時は来た時と同じようにドカドカと宿の廊下を走って行く。 「兄上!!!」 朔は遠ざかる景時の背中を見つめながら、隣にいるに向かって、 「、考え直すなら今のうちよ・・・はぁ〜〜。ちっとも反省していないわ」 「あはは。考え直せないよ。だってさ、こういう景時さんも可愛いって思うんだもん。 大人の男の人に失礼かもしれないんだけどさ」 心配はいらないようだ。がここまで思ってくれるのなら。 「物好きね」 お互いに顔を合わせてクスッと笑うと、二人は手を繋いで浜へと歩き出した。 |
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景時とヒロインをくっつける為に無理矢理(笑) (2005.2.3サイト掲載)(2005.8.15一部修正加筆)