考えるべき事 ≪景時side≫ ずっと気になっていて。 それでも言い出せないでいる事がある。 ───ちゃん、この世界で暮らしていて幸せ? 訊きにくい事ではあるんだけどね。 家に君がいると思うだけで帰るのが楽しかったり。 そんな事が当り前と思っていていいのかなって思うんだ。 それでも・・・・・・言葉に出せないで過ごしていた。 ちゃんが火傷したって、オレの式神が知らせてきた。 仕事を放り出し、慌てて家へ駆け戻った。 朔に手当てをされているちゃんは・・・・・・泣いていた。 月のものがないらしい。 本当はめでたい事だと彼女は言う。 しかし、怖いともいう。 それに、病ではないかとも考えているらしい。 それで火傷しちゃったんだね。 君が抱えているもの、それは不安─── ちゃんは小さな声で「お母さん・・・」と言って泣いていた。 情けないなぁ・・・・・・。 気になっていたなら、もっと早く行動に移すべきだった。 気配を断ち、その場を後にすると母上を探した。 少し前のオレは、自分の命なんていらなかったしね。 生に執着するものの、暗殺で自らの手を汚しつづける事に疲れていた。 それを思えば、今更オレが居なくなっても変らないよね。 母上、オレはちゃんの世界で生きようと思います! 母上は、口元を隠しながら笑い出した。 オレが跡取になった時に、梶原家の断絶は覚悟してたってさ。 それって・・・・・・オレの立場ってもんが・・・いいけどさ・・・・・・。 その足でオレは将臣君と譲君を探しに行ったんだ。 将臣君に話したら、「住所不定・無職でどうやっての事、食わせる気だよ」って。 言葉もなかった。 ここでこそ住む所も、一応源氏の軍奉行として禄もある。 もしかしたら父親になるかもしれないオレが、そんな甲斐性なしでいいのか? 余計に彼女に負担をかける事にならないか? ぐるぐると考えがまとまらなくなったオレを、将臣君が笑う。 「ここでの恩返しも、そろそろいいかなと思ってるんだ。一緒に戻ってやるよ」 彼の方が年下のはずなのに、なんだか兄のようだ。 譲君もオレを助けてくれるって。 「兄さんだけじゃ心配ですからね」って、いつものように軽く眼鏡を直していた。 ありがとう、二人とも。 後は、今夜こそちゃんに伝えようと思う。 オレが今まで感じていた本当の気持ちと。 これから本当の意味での幸せになるための考えを。 君の笑顔をホンモノにするための力を分けてくれた仲間たちに感謝! |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ
あとがき:痛みがわかる人には、かなわないなって思います。 (2005.5.3サイト掲載)