どう伝えればいいのさ?  ≪景時side≫





 ちゃんに話さなきゃ。
 話さなきゃとは思うけど・・・・・・。
 どこをどう話せばいいのさ?
 具体的な表現は避けたい訳よ、オレは。
 だって、それって男の身勝手じゃない?

 でも、それでちゃんが悩んだり不安になってたら。
 それがほんとの本末転倒。
 ・・・・・・自慢にならないよ。
 不安にしないようにって決心しておいて。
 オレが原因で不安にさせてちゃね〜〜〜。
 
 ここはひとつ、弁慶の言葉をそのまま使うか?
 伝わるかな〜〜〜。
 言葉って難しいよね。
 正しく正確に伝わってもらわないと、ややこしいんだよ。
 
 その・・・オレは・・・ちゃんに触れたいんだけど。
 ダメな時期で・・・・・・。たぶん。
 まだ月のは・・・無いみたいだし。
 半ば確定でしょ!オレたちのややこ♪
 うん。ややこは嬉しい。
 だから、益々ダメなんだよね〜、無理させちゃ。

 悩ましい。実に悩ましくありながらもオレはしっかり夕餉を食べた。
 ちゃんのニコニコ顔に見守られながら。
 何か良い事あったのかな?
 うん。ちゃんが笑ってくれてるのは嬉しいよ。
 
 んん?コレなに?
 オレにだけおかずが一品多い。
 基本的に武士は質素倹約を重んじるから。
 そんなに品数は無いんだよね、普通は。

「景時さん、味はどうですか?」
 ちゃんが心配そうにオレを見る。
「うん、美味しいよ。何だろ〜、知っていそうで知らない味だ〜〜〜」
 黄色いし、卵だよな?
「チヂミって言うんです。・・・食べちゃいましたね?」
 今度は悪戯な瞳でオレを見るちゃん。

 な、何?何かあるの?機嫌がいい事と関係してる?

 味はいいもんだから、残さず食べた。
 これ、クセになりそうな味だ。
 また食べたいな〜なんて思う。
 
 この時点で既に、ちゃんにアノ事をどう伝えようか頭になかった。



「か・げ・と・き・さん!」
 湯殿から出て、髪を拭くオレの後ろにちゃんが来た。
「どうしたの?」
 わりと平静っぽく言えたと思う。うん。
 アレ、どう言おうか考えねばという事をやっと思い出した。
「おかしいなぁ〜?景時さん、チヂミ全部食べたのに。まだ効かないや!」

 ・・・・・・は?効かないって、何か入ってたの?

 オレの顔色が変ったのを見て、ちゃんが正面に座る。
「そろそろ効いてきたかな〜?あのですね。弁慶さんに何でも話したくなるっていう、
とっても便利なお薬もらっちゃいましたvさっきのチヂミにね、入れてみたんですけど」
 ニコニコ顔のちゃん。

 それって・・・・・・オレの口は軽やかになってるって事だよね?

 まずいっ!まだ話をまとめていないし。言葉も選んでいない。
 ここでしゃべらされたら、オレはただの変態さんになってしまう!
 思わず両手で口を隠した。

「もぉ〜、何ムダな事してるんですか?じゃ、効いてきたか試してみましょうね」
 ずずずいっと膝を進めてくるちゃん。
 ヤバイ、ヤバすぎるっ!
 言わザルの如く、口を隠しつづける。

「景時さん、私の事好きですか?嫌いですか?」
 そんなに悲しそうな顔で聞かないで欲しい。
 オレの答えなんて決まっているのに。
「もちろん!ちゃんの事、大好き!!!」

 ・・・・・・あれ?オレの手は何処へ?勝手に口がぁ!!!

「えへへ。私もですよv・・・・・・じゃ本題。私は景時さんとイチャイチャしたいのに。
最近どうしてイチャイチャしてくれないんですか?それって私の事、嫌いって事?」
 ちゃんの瞳がオレを射抜く。
 この目を見つめながら嘘を吐くなんて不可能だよ。

「その・・・ややこがいたら・・・夜はダメで。でも、ちゃんに触るとしたくて・・・・・・。
でもダメで。だったら、離れようかな〜なんて・・・・・・・・・・・・」
 つるっとしゃべらされてるよ、オレ。
 弁慶の薬だもんなぁ〜、効き目最高って感じ?
 こんな便利な薬あるなら、後白河院に使えば・・・・・・。

 視線を泳がせていたオレは、ある事実に気づいてちゃんを見る。
 すると、ぺろりと舌を出して笑っている。
 もしや!オレ、騙された!!!

「景時さん、ごめんなさい。薬なんて入ってないですよ。・・・でも。すぐに好きって言ってくれて。
嬉しかったぁ〜〜〜」
 ちゃんがオレの膝に倒れこんできた。
「・・・・・・オレの方こそ、ごめんね?でも、我慢しなきゃだから・・・・・・」
 ちゃんの肩に手をやり、そっと引き離そうとすると、逆に抱きつかれた。
「嫌ですっ!お父さんとお母さんが仲良しじゃダメなんて変だもん。その・・・今は無理かもだけど。
ずぅーっとダメとか、そんなの聞いた事ないですよ?私」
 耳を赤くしながらも、しっかりオレにそう言ってくれた。

 もしかしたら、駄目な時期といい時期があるって事?
 弁慶のやつ〜〜〜!!!そういう事は教えるものだよ〜!
 それは後で追求するとして。
 せめて自立しないと、父親としての威厳ってもんが。

「その・・・さ。それは・・・何とか確認してみる・・・ね?オレもそういう事情に詳しくなくて・・・・・・」
「あ、あの・・・お願いします・・・・・・」
 しっかりちゃんを膝に抱える。何とか我慢の範囲内。
「今まで甘えすぎちゃってたから。それは直そうと思ってるんだ。頑張るからね?」
 そうそう。いくらなんでも妻にべったりな親父は教育上良く無さそうだ。
「・・・私が甘えて欲しいなぁ〜って思ってても駄目ですか?」

 ・・・・・・何ですとぉ?!甘えていい?そんな事言われたら───

「そりゃあ・・・ちょっと忙しかったりすると駄目とか言っちゃうかもだけど。今回、景時さんが全部
自分でしちゃってて。すっごい寂しくて・・・・・・二人の時間が減っちゃって・・・悲しかった」
 うわぁ!そんな顔しないで!!!
「そ、そ、その・・・甘えていいなんて言われると、オレって際限なく甘えちゃうよ?」
「ど〜んと任せちゃって下さい!」
 胸を張って答えるちゃんの、あまりの可愛らしさにオレは意識を手離しそうになった。

 ふぅ〜っ。危ない、危ない。
 ちゃんの、唯一の欠点だよ、可愛すぎるのが。オレの鼓動と意識が限界。
 だけど。オレが触れても穢れないって言ってくれた君だから。
 根性見せちゃうからね〜〜〜♪

「弁慶の薬だなんて・・・よく思いついたね?」
 ちゃんがオレから離れて、膝立ちでオレの髪を拭いてくれる。
「だって・・・こうしたかったんだもん。こうしてる時におしゃべりする時間が大好きで大切なの」
「オレも!」


 今まで通りの二人の時間は、とても楽しいものだったと。
 改めて気づかされた。
 無理なんてしないで、オレらしく・・・だね!
 





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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:“弁慶の薬”っていうだけで。効かないわけがないと思ってしまう(笑)     (2005.6.22サイト掲載)




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