考えるべき事  ≪景時side≫





 ずっと気になっていて。
 それでも言い出せないでいる事がある。

 
 ───ちゃん、最近どうしたの?

 
 訊きにくい事ではあるんだけどね。
 家に君がいると思うだけで帰るのが楽しかったり。
 そんな事が当り前と思っていていいのかなって思うんだ。
 それでも・・・・・・言葉に出せないで過ごしていた。
 だって・・・オレに見えないように溜息を吐いているんだから。
 




 ちゃんが火傷したって、オレの式神が知らせてきた。
 仕事を放り出し、慌てて家へ駆け戻った。

 朔に手当てをされているちゃんは・・・・・・泣いていた。

 月のものがないらしい。
 本当はめでたい事だと彼女は言う。
 しかし、怖いともいう。
  
 それで火傷しちゃったんだね。
 君が抱えているもの、それは不安───

 母親になる自信がないというより、出産に対する恐怖心。
 そうだよね。
 ややこ、どっちがいい?って話をした時は、あんなに楽しそうだった。
 ただ・・・・・・ややこを産むのは女人の方だから。
 君の『怖い』という気持ちを、同じく感じることは出来ないけど。
 せめて、怖くなくなるよう何かしたいと思う。

 朔も子供は産んでいないからねぇ・・・・・・。
 どうしたものかと戸口で入るに入れずに居ると、母上に肩を叩かれた。
 手でオレを追い払う仕種をする。
 あっちに行けって?そんなぁ〜!
 オレは気配を断ってその場に居つづけた。



 母上がちゃんを抱きしめた。
 そうだよね、二人も産んでるし。
 ・・・・・・あんなデカイのって、オレの事ですかぁ〜?!
 その言われ様に、オレの首が下がる。
 引き替えにちゃんに笑顔が戻る。

 小さく産んだのにやたら大きくなっちゃってって・・・・・・。
 オレの存在って・・・・・・微妙。

 デカイわりに臆病。
 デカイわりに根性なし。
 デカイわりに武術が出来なかった。
 デカイわりに小さな文字で。
 デカイわりに・・・・・・
 否定ばかりだな・・・・・・。

 そのまま地中深く埋りそうになったオレの繊細な心を。
 ちゃんの言葉が救う。

 大きな手は安心出来て。
 大きな背中は飛びつきたくて。
 大きな心はとっても優しくて強いだって!
 居るだけでその場を和ませる大きな存在?!
 それは誉めすぎだよ・・・・・・。

 ちゃんは、母上に「怖いけど、頑張る」と告げていた。
 
 

 前向きだなぁ・・・・・・。
 君の周囲はいつだってお日様の様にきらきらしている。
 オレも父親になる準備しないとね。
 いや、その前に。
 ちゃんにとって頼りになる旦那様にならないと!
 待てよ・・・・・・オレ頼られた事ない・・・かも・・・・・・!?
 頭に、殴られたような衝撃が走る。
 Σ( ̄□ ̄||| 梶原平三景時、一生の不覚!!!



 オレはそのまま部屋へ飛び込み、ちゃんの膝に縋りついた。
 母上には、頭を拳で殴られ。
 朔には、ちゃんに見えないよう足を少しだけ踏まれた。
 これは効く。足を普通に踏まれるより痛い。
 
 二人が部屋を出て行くと、ちゃんはオレの頭を撫でてくれた。
 母上に殴られた辺りを、優しく、優しく撫でてくれる。
「火傷、そんなに心配しなくてもいいですよ?」
 ごめんね、ちゃん。
 君の怪我が心配で抱きついたんじゃない。


 オレから離れないで───
 オレの事、嫌いにならないで───


 オレは本当に頼りにならない。
 君の事を一番に考えているつもりなんだけどなぁ・・・・・・?
 どうして駄目なんだろう。

 もう少しだけ・・・君の手に甘えていさせてね。 





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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:こっちの景時くんは、まだまだヘタレ中。パパになれるかな〜?     (2005.5.3サイト掲載)




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