May you have・・・・・・     後編





 本日はクリスマスイブ。
 会社は通常営業中というより、年末へ向けて大いに営業中といったところ。
 昨年の様なトラブルもなく、雑然としたフロアーの割には、やはりどこかが浮かれている。

「景時くぅ〜んは、定時退社ですか〜〜〜っ」
 受話器を置いた田原が、突然話しかけてくる。
「・・・どうかな。さすがに定時は無理だと思うよ。うん」
 積み上げられている未開封の郵便物。
 確認して欲しいと頼まれた書類のファイルは、いよいよ足元にまで並べられつつある。
 景時宛の電話が少ないのが救いだが、気軽過ぎるのか、電子メールというものは一方的に送られてくるため、
油断していると受信箱がパンク寸前。

「だ〜よねぇ〜。俺も無理っぽいなぁ。インフルエンザが治らなきゃ休めたのにさ〜〜〜」
「アホ!お前がこのチームに持ち込んだんだ。骨を拾うつもりで働け」
 鈴木が切れ味も見事に田原へツッコミを見せる。
「そ〜でしたっけね〜。二人も居ないと中々キツイやね〜」
 確かに最初に休んだのは田原だが、インフルエンザの震源地である確立はかなり低い。
 通勤電車や駅構内などの人混みで感染し、順に発症しただけの事だろう。

「ははっ。少し休憩してきたら?集中切れてるみたいだし。電話ならオレが当番しますよ〜ってね!」
「悪い!すぐに戻る」
 待っていたかのように田原が席を立ち去った。

「・・・大丈夫か?梶原は病気で休んでもいないもんな。お前も行ってくれば?休憩室」
「大丈夫、大丈夫!手を離すと、このページのチェックを忘れそうな方がコワ〜イ」
 メモを取りながらチェック中の作業を中断する方がもったいない。
「適当なトコで抜けとけ。郵便は後で手分けしようぜ〜〜〜」
「ありがと〜」
 互いに片手を上げて合図をして励ましあうと、再び仕事に集中した。





「よっ!」
「・・・・・・この時間にサボリって、大胆ですね。昼にも早すぎ」
 今年もめぐり合わせなのか、バイトのシフトを入れた大谷が田原を出迎える。
 景時とがよく待ち合わせに使うカフェは、景時が勤務する会社の近くにある。
 マスターとも気心しれた間柄で、田原も常連客のひとりだ。
「まあね〜。いつものひとつ。まだ席空いてるね?あの二人席、お昼に予約してイイ?このあたり、休みじゃ
ない会社多いから、昼休みに座れなくなりそうだから」
「マスターに聞いてみるけど、お昼だと厳しいですよ?水曜日だし」
 数人並ぶ程度には混雑する昼食時に、席が空いていると気まずい。
「大丈夫。ひとりは先に来て座っててもらうし、支払いは俺。クリスマス風で、食べやすいメニューにして
欲しいな。・・・ちゃん、もう冬休みなんだよね」
 大谷がわざわざマスターへ確認するまでもなく、カウンター席で独り言のようにしゃべり続ける田原。
 店のマスターが田原の前に立ち、注文のコーヒーを置いた。
「お前な、また・・・・・・」
「あ、ほら。返事来た。・・・景時、ずっと残業だし、今日も定時に帰れないとか断言してるし。昼ぐらいはね。
悪戯に付き合って下さいよ」
 呆れ顔のマスターに向かい、拝む仕種の後に携帯のディスプレイを見せる。
 そこには、の戸惑いの気持ちが見て取れる文面があった。
「俺が招待したいとメールしてくれ。席は予約。お前には持ち帰り用にスペシャルを金子に届けさせるか?
昼に仕事するつもりなんだろ?」
「ありがとう!話が早くて助かる〜〜〜。・・・・・・・・・・・・よしっ!昼前には彼女、来られると思う。
景時には内緒だからヨロシク〜。昼は自分で取りに来るから。俺が景時をここへ連れて来ないといけない」
 堪らず大谷が笑い出す。
「田原さんってさ、何かもう・・・・・・悪戯の神様降臨中」
「よく言われる〜。と、いうより、悪戯したい人材が周囲に多すぎなんだな〜。俺は悪くないと思うよ」
 時計を見ながらコーヒーを飲む。

「そんなに慌てて飲んで・・・・・・」
 もうメニューを考えたらしいマスターが、メモに書いて田原へ見せた。
「・・・デザート付なのがさすが!景時の昼休みは一時間だし、食べにくいのは時間がかかって可哀想だし。
これは可愛い。あ!コーヒーの味に関しちゃウルサイよ?猫舌じゃないから、熱いのが好きだし。服に香りが
ついてバレそうな方が心配。缶コーヒーじゃこうはならない」
 袖口を鼻へ寄せると、香りはしない。
 店内に溢れるコーヒーの香りに麻痺しているだけで、景時には休憩室にいなかった事がばれてしまいそうだ。

「・・・休憩室で一服するんだな。煙草で匂い消し」
「そうします。支払は後で来るんで、とりあえずツケでお願いしま〜す」
 コートも着ないでここまで来たため、店のドアを開けて一瞬身を縮めてから走り出した。

「田原さんも面白いヒトですよねぇ・・・・・・」
 空いた食器を片付けながら大谷がドアの方を見た。
 既に田原の姿は無く、冷たい風が入ってきた余韻だけが残っている。
「も・・・の元の方が面白いか。いや、あれはなぁ。ちゃん絡み限定か」
 マスターをはじめ、大谷たちバイト仲間に人気なのは景時と
 特に景時は本人が真剣だから面白さが倍増してしまう。
 そこにの天然が加わると、景時の空回りとあいまって、見事な笑いの相乗効果。
「追いかけてるのか、追いかけさせられてるのか・・・彼女、無意識みたいだし。デザート手伝いますか?」
「ああ。可愛くしてやってくれ。景時にはいつもので十分だが、ちゃんには特別だ」
 先ほどのメモを大谷に見せると、頷いて返される。

「金子〜!田原のランチ、テイク。量は多めで」
 奥から返事が聞え、こちらも昼の準備に取り掛かる。

「まあ、言う程混みはしないだろうが、念の為予約席にしておいてくれ」
「OKです!」
 マスターに手渡された小さなツリーを受けとると、敬礼をして大谷がホールへと戻った。





 田原からの再びのメールに、出かける準備を始める
 景時を送り出した後、順次ディナーの用意をしていたので、昼食位のロスは挽回できそうだ。
「折角のお誘いだもん。何だろうな〜、ランチ」
 田原も心得たもので、マスターのスペシャルランチを食べようという誘い文句だけ。
 景時の同僚数人は顔見知りのため、お昼のオマケに誘われたとは考えている。
「可愛い服にしても、皆さんお仕事中だし・・・・・・」
 派手ではなく、普段着ではなくといったコーディネートに決めると、戸締り確認をしてから家を出た。





「悪かったな。電話あった?」
「ラッキーな事に一件だけ。メモに書いたけど、メールにしてくれるって言ってたよ」
 田原のパソコンには景時が書いたメモが一枚貼られているだけ。
 誰もが我先にと朝一番に用事をこなしただけで、とりあえずはひと段落といったところらしい。
「・・・助かった。朝の勢いだと、机の上がメモだらけかと思ってた」
「あはは。ただし!郵便は手が空いた人から随時確認ルールになったから」
 景時の周囲にはファイルが山積み。
 向かいの席や周囲の同僚たちも忙しそうだ。
「俺に決定だな〜。メールチェックしたらやるさ」
 メモをはがすとマウスに手を添えクリックしする。
 ディスプレイを見ながら景時の様子を窺い、己の行動に不審を抱いていないか、たっぷり観察をしたが、
気にする余裕もなさそうなのを見て取ると、心の中で悪戯の成功を確信していた。
 後は時計の針が進むのを待つだけでいい。
 ハサミを掴み、箱の中の一番下にある郵便から開封を始めた。





「こんにちは・・・・・・」
 昼には少し早い時間、が姿を見せた。
 すかさず大谷が迎え入れ、さり気なく予約席へと案内する。
「あの・・・予約だったんですか?」
「念の為ね。今日、平日だから、お昼に座れないと困るでしょ?」
 大谷の説明に納得したのか、手渡されたメニューを広げると飲み物のページを開く。
 が、すぐに閉じてしまった。
「いつもの紅茶、先にサービス」
「わ、悪いです、そんなの」
 本当は何か頼むべきだと思うが、景時たちが来るまで待たないのも悪く感じてメニューを閉じた。
 それを察した大谷が素早くフォローをしたのだ。
「マスターに言われてるから。スペシャルのセットメニューの一部」
 小声でに告げると、大谷はカウンターへ戻って勝手にオーダーを入れてしまう。
 マスターがに向かって手を振ってくれたので、軽く会釈をして返した。

(いつも甘えちゃってるなぁ。景時さんに言わなきゃ)
 景時ならば上手く感謝の気持ちを伝えてくれるはず。
 ここはとりあえず甘えておくに限ると、景時たちが来るまで読もうと持ってきた文庫本を開いた。





「よっしゃ!昼飯行こうぜ〜〜〜」
 昼の合図がフロアーに響く。
 田原は立ち上がりながら、隣席に座る景時の肩を叩いた。
「あ。オレは・・・コンビニで買ってこようかな。時間がもったいないし」
 昼の混雑を避けたいのもあるが、早く食事を済ませられれば、多少なりとも仕事を早めに再開できる。
「ダメ〜〜〜。休み時間は休むもんだ。ひとり寂しくなんて勘弁してくれ」
 景時の腕を掴み、強引にエレベーターホールまで引きずる。
 ここまですれば景時の事だ。もう嫌とは言わないだろうとの計算もある。
「・・・わかったよ。で?何にする?」
「コーヒーが美味い店に決まってるだろ」
 蕎麦かラーメンかという意味で聞いたのだが、予想に反してのカフェ。
「・・・そろそろ麺類がくる頃だと思ってたのに。惜しい!」
「超大盛りパスタにデザート付の予定。ま、麺は正解」
 田原を先頭にカフェへと入った。

「いらっしゃいませ。あちらへどうぞ」
 田原が予約した席がある方を大谷にさらりと手で示され、田原は迷わずその奥まった席へ向かう。
 景時は店内の飾りに気を取られていたのか、視線を進行方向へ戻すと同時に妻の名を口にしていた。

ちゃん!?なっ・・・どっ・・・・・・」
 田原がの向かいに座ったため、景時はテーブルの脇に立つしかない。

「こんにちは、田原さん。あの・・・・・・」
「メリークリスマス!ちゃん。田原サンタがプレゼントをお届けです。一時間限定で悪いんだけど、
マスターのスペシャルランチをお楽しみあれ!・・・はいよ、プレゼント君。ここへお座り」
 交代に景時が座らされ、今度は田原がテーブルの脇へと立つ。
 そこへ大谷が飲み物を運んできた。
「はい、レディーファースト。景時さんは実験君。田原さんはあちらへどうぞ〜」
「どうも。じゃあな、お二人さん」
 説明を大幅に省略されたが、ここまでされれば景時にもわかる。



「景時さん?あの・・・・・・」
「騙されたよ、田原さんに。お昼、どうしてもココがいいって。俺たちのために、マスターたちまで
巻き込んで悪戯してくれたみたい」
 大谷が練習したのであろうカプチーノを一口含む。
「やだ、そういう意味だったんですね?私、皆さんと一緒にランチって勘違いしてた」
 バッグへ読みかけの文庫本をしまいながら携帯を取り出し、田原からのメールの文面を見せる。
「・・・これじゃあ、色々な理解が出来るよね。ほんっと・・・ヤラレタ」
 溜息を吐きながらカウンター方向を見ると、田原が親指を立て、紙袋を持ち上げて見せる。
 手を握ったり開いたりし、田原の悪戯の真意を理解したと伝えると、田原が手を振りながら店を出て行った。

「それでは、改めまして。田原さんからの一時間限定プレゼント、景時はいかが〜ってね!単に昼休みが
一時間なんだけど。よろしくね?」
 に向かって頭を軽く下げる。
「もう!また皆さんに気遣わせちゃった。これもね、先にどうぞって。それなのに、新しいポットまで」
 の紅茶のポットは、景時たちが来た時に新しいものと取り替えられている。
「それは・・・年末か年始に悪戯返しをしようか」
「はい!でね、その前に、ジンジャークッキー。皆さんもくるかと思って買っちゃったんです。これ、
どうしましょう?」
 紙袋の存在を景時に見せる。
「ふむ。・・・マスターたちの分は置いていくからいいとして。田原さんたちにはオレが持っていくよ。
出来るだけ早く帰りたいけど、残業ゼロっていうのは無理だろうし。残ってる人に配るね」
 本日出社している人数を素早く計算し、かつ、残業しそうなメンバーの顔を思い浮かべる。
「たぶん、足りる。ありがとう。・・・田原さんの電話当番担当も悪くないね!」
「ええっ!?そういえば、田原さんは何処で私にメールをしてくれたんだろう・・・・・・」
 思いっきり仕事中の時間、景時の隣席でメールをしていたら目立つと思われる。
「午前中に早々と休憩に行ったんだよね。その時だろうなぁ。・・・やたらそわそわ落ち着きがなかった」
「きゃはは。子供じゃないんですから、落ち着きないとか失礼ですよ」
 は笑うが、悪戯を思いつき、即実行したくてウズウズの方が適切だったと今ならわかる。
「今度から田原さんが席にいない時は気をつける事にするよ。ほんっと・・・参っちゃったけど、何だか
嬉しい悪戯だから、こういうのは大歓迎かな」
「私も・・・・・・」
 が照れて俯いた瞬間、大谷がランチプレートを並べ始める。

「スープはポタージュ、サラダはシャキシャキバージョン、メインはハンバーグでございます」
 景時の方はほぼいつものランチメニュー。
 の方は───

「ツリーになってる〜。チーズの雪だぁ」
 ハンバーグを強引にツリーの形にしてある。
 ニンジンも型抜きがしてあり、お子様ランチのよう。
 よくよく見れば、景時のニンジンもハート型にされていた。
「ハートを食べろって事ね。頂きますよ〜、もちろん。・・・大谷君、今日のは美味しい。苦味がイイ」
「ども!デザートもございますので」
 並べ終えると、軽く一礼をして素早く戻って行く。
 店内、ほどほどに席が埋まっているため、夕方の様に話す時間はなさそうだ。

「大谷さんもお絵かき上手ですよね。前にも葉っぱを見せてくれたんですよ」
「これね〜、飲む前に“おっ”と思うよね」
 段々と味のバランスが良くなってきた大谷のカプチーノ。
 まだ客に出せる出来ではないため、景時や田原相手に練習をしている段階。

「食べる方も!」
 マスターのさり気ない気遣いが嬉しい。
「確かに。オレには量を重視してくれてる。・・・オレね、ちゃんに昨日言われた通り、お昼に弁当と
一緒に残業用のお菓子も買おうかと一瞬考えたんだよね〜。二人休みだから、もう残業確実だなと思って。
何だろうね、残業しててお腹が空いてるのを自覚すると、急激に悲しくなるっていうか・・・ちゃんの
料理が恋しいっていうか。これだけボリュームがあって、君とランチのご褒美つきなら、午後の仕事も
頑張っちゃうからね〜」
 いつもなら空腹を満たすだけの時間。
 がいるだけで気分が浮き立つのだから、田原にお手軽といわれからかわれても仕方がない。

「無理しないで下さいね。ディナーの準備はバッチリですから。・・・あのグラス、使いましょうね」
「そうだ!あれね〜。使おうね〜〜〜」
 が眺めに眺めて喜んだワイングラス。
 もう二年経ってしまったワインを、夫婦で飲めるクリスマス。

「あぁ、そうかぁ・・・プロポーズOK記念ワインともいうなぁ、アレ」
 ふと呟いた瞬間、景時の頭上から声がした。
「ワインでプロポーズって初聞きなんですが〜。デザートと飲み物になります!」
 またも大谷が給仕をしてくれ、片付けられたテーブルにデザートと飲み物が並べられている。

「プロポーズっていうか、お互いに独身最後のクリスマスの年に景時さんがワインを買ったんですよね!
それがね、その時は私が飲めない年で。今年はやっと飲めるの。夫婦で飲もうねって約束したの」
「なるほど。だから記念なんだ」
 の説明で大谷は納得したのか、二度頷いてその場から離れて行く。
 景時とは夫婦と脳内にインプットされていて、この店の誰もがつい忘れてしまう。
 が成人したのは今年だったのだと思い出した。

「雪だるま!」
 丸い大小のアイスが二段になれば、可愛らしい雪だるまの完成。
 チョコレートのツリーに小さなチョコレートスポンジの家まである。
 景時の方は普通にコーヒーゼリーだけなのだから、差をつけられたものだ。

(やるなぁ、マスター。あれは大谷君なんだろうケド)
 今宵、が作ったケーキを食べる予定がある身としては、昼のケーキは避けたい。
 ただし、にとっては別腹ルールは当たり前。
 女性陣にとっての甘いものは食事に数えないのが暗黙のルールらしいからだ。

「すごぉ〜い。アイスで簡単に作れますよね。思いつかなかった!まあるいの二個でいいんだもの」
 チョコレートで顔まで描かれユーモアたっぷり。
 これならにも出来そうだ。
 考えてみれば、コーンにダブルやトリプルのアイスを食べたこともある。

「ははっ。可愛いけど、食べないとね」
「そうですよね。景時さん、時間大丈夫?」
 慌ててスプーンを手に取り食べ始める
「うん。のんびり食べて。オレは食べ終わってるし、コーヒー飲む時間はあるんだ」
 マスターが淹れてくれたカプチーノを飲む。
 紙一重の差だが、やはりこちらの方が美味しい。
 同じ豆や道具を使っても差が出るところが実に興味深い。

「・・・ヒノエ君たち、コーヒーどうしてるかなぁ」
「ヒノエくんは上手になっていそうですよね。頼まれていないのに皆に無理に飲またり。自分で飲みたい時に
淹れて、周囲に配ったり。・・・それを敦盛さんがはちみつプリンのデザートをせっせと作ってフォローして。
御館さんは微妙。豆挽きだけ上手になって、後は銀にお世話されて、泰衡さんが嫌そうな顔で見ていそう」
 想像するだけで楽しめる異世界の仲間たち。
 初めてのコーヒーに対する反応は様々だった。

「みんな、クリスマスをしているかもね」
「覚えるとしたがりですもんね。ヒノエくんなんてとくに。先生や九郎さんが巻き込まれて・・・・・・」
 あの華やかな気配り上手の青年が、景時とがいなくても景時の家族を楽しませてくれている事だろう。
 弁慶と敦盛が協力してくれているに違いない。
 そうして少し寂しがりの九郎や、人との繋がりを避けているリズヴァーンを誘い、食いしん坊の龍神をも交え、
楽しく過ごせているならいい。

(君が作った絆は・・・強いからね・・・・・・)
 デザートを食べ終え、紅茶を飲んでいると視線を合わせる。

「・・・顔に何かついてます?アイス?」
「違うよ。今日は頑張って八時までに帰るからね。・・・待っててくれる?」
 あの時と同じ約束の言葉。
 違うのは、苦し紛れの嘘で固めた言霊ではない。

「待ってますよ、いつだって。時計と睨めっこなんですから」
 微笑みながら返された言葉に、胸が温かくなる。



 いつでもオレを待っていてくれる人がいる。
 何もない日でも。
 クリスマスでも。



「もしも変更の時はメールするから。でもね、きっと今日は予定通り。オレには田原サンタがついてるし」
「田原さんは・・・いいのかな?残業しても」
 もっともな心配だが、田原にとっては遅い方が都合がいいのだ。
「田原さんの彼女も残業だって言ってたからね。いいんだよ、きっと」
「大変なんですね、働くって。私はどうしようかなぁ・・・・・・」
 大学を卒業する前に決断しなくてはならない。

ちゃんの自由でいいよ。オレは君といられるなら何だっていいんだからさ」
「うぅ。もう少し考える事にします。・・・ごちそうさまでした」



 お昼にとびきりのプレゼントをもらったクリスマス。
 今年は驚かされる側の二人。
 人の暖かさに感謝をした特別の一日になった。










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『十六夜記』景時蜜月ED 望美ちゃん大学生!

 あとがき:ワイングラス、バカラです。はい。カットが美しい。むはっv     (2009.01.05サイト掲載)




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