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title It widens one's view page No. 005
「お待たせしてしまいましたか?おや・・・・・・」
明かに人数が足りない。
「ヒュウガなら庭。勝負運のなさを克服したいんじゃないかな」
ジェイドが口元に手を当てながら報告する。
「ふむ・・・今回はヒュウガの案であみだくじに決めましたからね。
なあに、勝負事は結果を先に考えればいいだけの事ですよ。さあ、
お茶会をはじめましょうか」
紅茶の香りがカップへ注がれることにより辺りに広がる。
「わ・・・・・・ニクスさんの紅茶の香り」
鼻を鳴らしながらが香りを楽しむ。
「ニクスの紅茶は美味しいよね。同じ茶葉なのに」
そろえる物は同じだ。
茶器とお湯と茶葉。
後はタイミングと僅かな匙加減の問題。
「お褒めに預かり光栄ですよ。さあ、いただきましょうか」
最後の一滴をのカップへ注ぎ、ニクスが席に着く。
「あの・・・私、ニクスさんの宿題の答え・・・ちょっとだけ
わかったんです。だから・・・・・・」
「そうでしたか。それは有意義な一日になったようですね。では、
聞かせていただきますよ」
ニクスが姿勢を正したので、自然にも背を伸ばし
椅子に座り直した。
「私、自分のところへくる書類について疑ったことがなかったんです。
だから、それを作った人の想いまでは解っていなくて。誰かにとって
良い事が、誰かにとって悪い事になるんだってわかったんです。
だから、その書類が正しく作られていて、私もいいと思ってサインを
していたんですけれど、もう片方、もしかしたら、もっと沢山の
別の想いがあったんじゃないかって」
言葉はたどたどしいし、とてもすっきりまとめられてはいない。
それでも見つけた答えの意味が伝わらない訳ではない。
「なぜ・・・そう思いましたか?」
ニクスが優しくさらに問いかける。
「虫が・・・バッタなんですけど、たくさん飛んできて。男の子たちは
嬉しそうに追い掛け回して。でも、女の子たちは嫌がっていて。
それに大人たちは必死に追い払っていたんです。バッタって害虫
なんですね。せっかく作った作物を食べてしまうって・・・・・・」
気づいたのは、男の子たちが喜んでいて、大人たちが慌てていた
からだ。好き嫌いの問題ではない。
これがもしも男の子たちの意見だけを知り、楽しいという理由で
バッタを増やそうとしたならば───
「すべてに繋がっているんです。何かが動けば、動いた後は空間に
なるように、何かが変わるんです。だから!」
勢いがつきすぎてしまい立ち上がる。
「ええ。貴女の仰るとおりです。何かを決めれば何かが変わる。
変わって欲しくない何かにも影響があるかもしれない。ただ、
これが正解というものは無いとだけ・・・覚えていて下さい」
「ええっ?!まだ何か足りないものが・・・・・・」
ようやくわかったと思った答えが正解ではないらしいと、脱力する
。
無意識に椅子へ座り込んでしまった。
「クスッ・・・違いますよ。今の話でいうならば、人の数だけ、モノの
数だけの思いと事象があるという事です。正しい答えなど存在しない
だろう事にも決断しなくてはならない場合もあるのですよ。最大多数の
・・・とはよく言われる言葉ですが、では、少数は斬り捨ててもよいと
そう思いますか?」
ニクスが空になったカップへ紅茶を継ぎ足す。
の首は勢いよく左右に振られた。
「そう。私の女王陛下ならば、そう仰っていただけると信じていました。
誰もがこの空の下、平等にありたいものです・・・・・・」
窓の外へ視線を移したニクスの横顔はとても穏やかだ。
(答えなんてないから、出来るだけいい答えを見つけなきゃで)
の瞳に強い光が宿る。
(だからって、犠牲を仕方ないと斬り捨ててはいけない。うん!)
声には出していないが、の決意は頷きという行動に
よって示されていた。
勢いがつきすぎて、無意識に頷いているのだ。
「さあ。これから多くの出来事を経験して下さい。何かを考えるには、
より多くの知識と経験を有している事が大切ですよ」
ニクスがこの問題は片付いたという意味で願いを口にした。
「はい!自分で見て、考えて・・・行動しなきゃ。やっぱりニクスさんは
先生みたいです」
まだまだ師と仰ぐ人物が欲しい年頃。
ニクスの言葉の意味の先を知るには、己の轍を継ぐものが現れないと
難しいかもしれない。
「私でよろしければ・・・いつでもおいで下さい。ここにあるものは
何でもご自由に。そう・・・人も含めて」
ニクスにしては珍しい軽口。
「人って・・・・・・」
人を使うとなれば労働しか思い浮かばない。
「例えば・・・レインの頭を使うとか。ヒュウガに遠くの国について
教えてもらうとか。ニクスに過去の出来事を聞くとか。そうだなぁ、
俺には食べたいスイーツのリクエストだと嬉しいな」
ジェイドが例えを述べながら説明を加える。
もちろん、ニクスの配慮を台無しにしないよう軽めな例え。
「・・・あれれ?今とあまり変わらないです」
「・・・そうかもしれないですね」
の首が右へ傾く。
すかさずニクスが返答すると、周囲に笑いが起きた。
「さあ!楽しいティータイムにしましょう」
ニクスの発声により、夕食までの時間を楽しく過ごした。
「オレ様のスペシャルディナーを味わえ!というメニューにしてみた」
何のことはない、が好きなメニューが並んだだけ。
「わあ!ローストビーフ。うふふ。美味しそう」
メインの隣には、小さな海老グラタン。
サラダも小さなシュリンプが散りばめられと、ある意味完璧。
「そう、本日はソースを三種類。わさびソースも試してくれよな?」
ヒュウガの作る料理で思いついた、わさびのソース。
鼻につんとくるが、肉と合いそうだと思ったのた。
「マスタードソースだけじゃないんだ。アイデアだね?」
ジェイドも料理に関しては研究熱心。
お試し系が多いレインの料理だか、誰もがその味を楽しみながも
批評をし、楽しい時間が過ごせた。
中庭に人影が二つ。
ニクスとレディアスのものである。
「この度はご配慮をいただき・・・・・・」
「とんでもない。年寄りのお節介とでもいうのでしょうか。まだまだ
お若い陛下ですから、学ぶことが多いのは事実。ただ、無理に押し
つけた事柄は学びには繋がらない。ご自分で考えてだした結論ならばと
そう感じただけです」
ニクスが遠く輝く月を見上げる。
「ええ。陛下にはまだ多くの方々のサポートが必要です。私はどうも
型にはまりすぎで、陛下に多くを学んでいただく機会を設けられそうに
ありません。・・・週末はこちらで・・・アルカディアで過ごして
いただき、治めるべき世界を見ていただきたいと考えたのですが」
「そう・・・ですか。それはぜひ協力させていただかなくては。
我々は陛下とオーブハンターとして過ごした事もございますから。
必要なものがあれば何でもご用意しますよ?警備にしても、聖都に
依頼すれば銀樹騎士が・・・・・・」
ニクスの言葉を手で遮るレディアス。
「それでは意味がないのです。こちらでも陛下が陛下としてある
のでは、聖地と同じになってしまう。こちらでは、
として過ごせるようにだけご配慮いただければ。御身の安全に関しては、
ニクス殿をはじめレイン殿、ヒュウガ殿がいらっしゃる。聖地からは
ジェイドを必ず派遣するようにいたしますゆえ、お願いいたします」
ニクスが肩をすくめる。
「補佐官殿もいらしていただかないと意味がないのですよ。貴方にも
この世界を見て欲しい。とは別の視点で何かを
見い出せるかもしれない。そうでなければ補佐をする者は必要ない。
陛下の意見に反対する者も時には必要ですよ?」
ニクスに遣り込められてしまったレディアス。
首を縦に振ると、右手を差し出す。
「これから・・・よろしくお願いいたします」
「ええ。こちらこそ」
密約が交わされた月明かりの夜。
これからは執務の名目で週末に陽だまり邸へ滞在できる。
その事実が知らされるのは、来週末───
2009.01.16
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