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 『一葉』  知盛×望美編







「わぁ〜〜〜。最後の一枚だぁ・・・・・・」

 秋も深くなったある日の梶原邸の庭。
 今日はいよいよ寂しくなってしまった庭の枯葉を掃除していた望美。
 ふと青空に筆で一筆描いたような雲の帯を見上げていると、もっと
近くに気になるモノを発見した。



 真っ青な空に、黄金色の銀杏の葉が映える。
 首が痛い角度だが、厭きずに眺めて続けている望美。

「こういうの・・・風が吹いたら飛ばされちゃうよねぇ・・・・・・」

 庭のお掃除は中々の重労働だ。
 景時が悪いわけではないが、庭は広いし、草木が多い。
 毎日大量の落ち葉が火種となって消費されるので、無駄ではないのが救いだ。



「何を・・・見ている?」
 望美の視界を遮った知盛の顔。
「うひゃあ!!!どこから来たのっ。かっ、顔がっ・・・・・・」
 逆さに迫る知盛の顔に驚き、慌てて首の角度を戻した結果は───


「・・・っ!」
「うきゃんっ!」


 知盛の顎に、望美の額がぶつかった。





「もぉ〜〜〜!知盛が悪いんだよ?突然変なトコから出てくるから〜〜〜」
 赤くなってしまった知盛の顎を撫でる望美。
「あまりに暇そうなご様子だったので・・・な」
 本当は空の青に吸い込まれるように見えたのだ。
 空と望美の間を遮りたくてわざとした。
「知盛?」
 知盛の様子がおかしい。
 視線を逸らさずにいる望美。

「・・・・・・どうせなら・・・口づければよかったな?」
 考えてみれば、かなりの至近距離だったのだ。
 触れ合うどころか、一撃をいただいてしまった知盛。
 不満が顔に出ていたのだろう。
 望美の方が知盛の首へと飛びついた。

「望美?」
「ちゃんとキスしようよ。今から!」
 なんとも大胆発言だが、この木陰は母屋からは死角。
 ここならば誰にも見られていないのと同じだと考えた望美。


「・・・クッ・・・畏まりましたよ、姫」


 しばし木陰でキスを繰り返す羽目になった望美。
 始まりを決めた時は、終わりも決めるべきだったと後悔していた時───



 はらり───



「・・・知盛・・・・・・」
「・・・どうした?」
 ようやく解放されたのだが、残念な事に最後の一葉が合図となってしまった。


「あ〜あ。落ちちゃった」
 黄金色の葉を屈んで拾う望美。
 指先でくるくると回して見せる。

「最後の銀杏か・・・・・・これで庭掃除から解放されるな」
「もぉ〜!情緒の欠片もないんだから!・・・そうかも」



 いつの間にか雲もなくなった空は、ますます高く済んだ空色をしていた。