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『ひまわりのタネ』 知盛×望美編
「あ〜あ。くてっ・・・となっちゃって」
太陽に向かって気合を入れて咲いていたひまわり。
咲いた次は俯いてしまう。
まるでもう役目を終えたから顔は上げられないといった風情が夏の終わりを告げている。
梶原邸の庭は広く、ひまわりも望美の希望によりそれなりの場所をとって咲き誇っていた。
咲いている時は気分がいいが、何事も終わりを見るのは物悲しい。
物干し竿並に太い茎に触れ、このあとどうすればいいのかと望美の背よりも高くなってしまった
ひまわりを見上げていた。
「・・・何を・・・見ている?枯れた花など・・・・・・」
望美の背後から知盛の手が伸びる。
ひまわりは知盛の身長よりも高く、知盛を見下ろしている。
「どうしたの?知盛が昼間に来るなんて。夕方、雨が降っちゃうかも。・・・ひまわり、大好きだから
たくさんここに種を蒔いたのにぃ・・・終わりがこんなにガッカリだなんて、知らなかったんだ」
春日家でも毎年数本が庭で誇らしげにその大輪の花を咲かせていたのだ。
だが、花が萎れた後は望美が庭の手入れするわけもなく、ひまわりがどうなるかなど考えたことも
なかったのだ。
「ひまわり・・・か。陽に向かえなくなったひまわりなど・・・意味がない。捨て置け」
「そうはいうけどさ。これ・・・けっこう太いし。なんとなくこのままっていうのも・・・・・・」
このまま放置しておけば、やがて枯れて種がとれる。
種になるまでぐったりしたひまわりを見続けるのも心が重い。
望美にしては珍しく思い切れないでいた。
「・・・斬るか。そう望美の気持ちを煩わすのなら・・・な」
「はぁ〜?知盛っ!!!」
望美が止める間も無くザクリと斬り捨てられたひまわりたち。
後は庭で肥料になるしか道はなさそうだ。
「あ〜〜〜、斬られちゃった。でも・・・私も斬っちゃおうかな〜とは思ってたんだ。くってりしてるのは
好きじゃないの。また来年のためにいい肥料になってね!」
ひまわりから油がとれる事を知らない望美は、ただ斬り捨てられてしまったひまわりを重ね始める。
「そんなもの・・・下男にでもやらせろ。わざわざ俺が訪ねてやってるんだぜ?他に・・・・・・」
望美を片腕で抱きしめると、その耳元へ口を寄せる。
「スル事があるだろう?」
真っ赤になった望美の平手が知盛へとぶがかわされる。
「・・・クッ・・・危ない女」
「知盛がお馬鹿だからでしょ!いつも、いつも、い・つ・も!それしかないの?」
庭中に響き渡る声を張り上げる望美。
知盛はなれたもので肩を竦めるとひと言。
「他などない」
望美、考えが浅かったの図。断言されては他に言葉がない。
夏の終わり、他などないまま始まる初秋───