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『感染源』 知盛×望美編
「うわ〜、だから言ったのにぃ。お馬鹿なんだから」
熱病との話を聞いて、望美が知盛を見舞いに来た。
いつもだらけているが、今日は特別だるそうだ。
「・・・クッ、嫌味を言いにわざわざお越しかな?愛しの姫君は」
「あ〜、もう。知盛ってさ、弱ってるの知られたくないタイプだよね〜」
相手が弱っているのを確認し、やや枕元へ近づく望美。
知盛の手が望美の膝へ伸ばされた。
「素直じゃないな〜。少し待ってて」
軽く一度手を握り返すと、額へ水で絞った手拭をのせる望美。
「ど?少しは冷たい?」
「・・・ああ」
知盛が瞳を閉じると、望美がさらに近づいて知盛の頭を撫でる。
「・・・クッ、珍しいな。こんなに近づいてきて」
目蓋は動いたが、知盛の目は開かれない。
「病人だもんね〜。悪戯できないでしょ?少しは黙って寝なさい!」
ぺちりと手拭の上から額を叩かれた。
「・・・・・・あい・・・・し・・・ろ」
「なあに?」
聞き取れなかったので、知盛の口元へ耳を寄せると知盛の腕が望美を抱き寄せた。
「ちょっ!何やってんのよ!」
知盛の胸の上で望美が暴れる。
「・・・クッ、相手をしろと言ったんだ」
「しゃべれるじゃないっ!信じられない。騙された〜」
力いっぱい腕をついて知盛から離れる。
「・・・ケチだな?」
肘をついて横向きになった知盛。
「〜〜〜知盛!大人しくしなさいっ!!!」
知盛の肩を押して仰向けに寝かせると、衾をかけなおす。
落ちている手拭を絞って、額へとのせた。
「だいたいね〜、薬飲んでる?それに・・・誰も近くに控えてないし」
「・・・ウザイから下がらせた」
望美が大きな溜め息を吐いた。
「そういう言葉ばぁ〜っかり、すぐに覚えて。待ってて、お粥もらってくるから。ご飯も食べてないでしょ」
望美が立ち上がろうとすると、裾を知盛に掴まれた。
「・・・知盛。アナタね、私を転ばす気?!」
「ここにいろ」
「何気に命令口調なんだから」
食事を取らせないと、体力も戻らなければ、体内の水分も無くなってしまい危険だ。
望美が考えていたところに、幸い気を利かせた女房が食事を持ってきてくれた。
「わ〜。ありがとうございます。私が知盛に食べさせますから!」
望美の後ろでは、知盛が手で払う仕種をしている。
一礼をして、さっさと女房はその場を引き上げた。
「そんなに元気なら起きられるでしょ?横でもいいから起きて」
「・・・クッ。はい、はい。姫君の仰せのままに・・・・・・」
上体だけを起こす知盛。望美は膳を近くへ引き寄せると、茶碗と匙を手に持った。
「・・・ふぅ〜〜っ。いいかな?うん。はい!あ〜〜んして」
望美が冷ました粥がのる匙を知盛の口元へ出す。
「・・・何の冗談だ?」
「何よぅ。食べさせてあげよ〜っていう、優しい心遣いじゃない。わかんないかな〜」
顔を顰める知盛に構わず、口元へ強引に匙をつける。
「食べなよ。食べて?食べられないの?私が出したご飯は食べられないっていうの!」
ぐいぐいと押し付けられ、最後は口内へ押し込まれてしまった。
「・・・クッ、クッ、クッ。望美、最高」
額に手を当てて知盛が笑い出す。
「何よ。早く治るといいな〜って、看病してるのに。笑うこと無いでしょ」
「・・・いや?最後に望美を食べさせてくれるなら食うぜ?」
しばし、奇妙な沈黙が流れた。
「・・・・・・風邪が治ったら食べていいから」
「それは、それは。それじゃ、続きを」
知盛が指で口元を指す。
「〜〜〜わかったわよ!食べさせてあげればいいんでしょ!食べさせれば!」