薄群青   6/30





「景時さんっ!・・・何してるの?」
 家の庭に座り込む彼の人の背に凭れ掛かる
「ん?ん〜〜〜。紫陽花って土で色が変わるって聞いたから・・・・・・」
 景時の手元を覗き込めば、せっせと土を採取している。
「・・・その土、ど〜するの?」
「いやね?調べてみようかな〜って。実際どんなものか知りたいな〜なんて」
 同じ庭なのに紫陽花の色が違うのは事実だ。
 すでに片方の採取は終わっているらしい。
 土を掘り返した跡がある。
「ちょっと待ってて下さいね!」
「へ?」
 が家の中へ戻る後姿を眺める。



 数分後、本を片手に戻ってきた。
「景時さん。これね、ママの本。みて?」
 に差し出された本を、軽く手を叩いて土を落としてから受け取る。
 どうやらこの本に何かあるらしい。



 『趣味のガーデニング6月号』



「ガーデニング・・・・・・」
 パラパラと目次を見れば、しっかりと紫陽花の文字が目に入る。
 目的のページを開き、黙読をすると───



「えっ?!え〜〜〜!!!そんなの、初めて知った。土、関係ないの?!」
 を見れば、しっかり頷かれる。
「そ〜なんですって。私ね、青が綺麗だな〜って去年ママに言ったの。家には
なかったら。公園の紫陽花、綺麗な青じゃないですか。そうしたら、今年はある
から不思議で聞いたんですよ。私も土って思っていたから」
 が指差す先の紫陽花は、確かに小さい。そして───

「品種改良かぁ・・・そっちはちっとも考えになかったよ。あ〜らら」
 集めた土は、どちらも同じという事になる。
「でも・・・ま!一応調べてみようかな。より綺麗な花が咲くようにとかね」
「うん!私、あれより深い青がいいな〜。青い花って珍しいし。雨に濡れたら
青の方が涼しげですね?」
 庭に咲く紫陽花を指差す。その花は、青といっても水色に近い青。
 本日は梅雨の晴れ間といったところで曇り空。
 幸い雨が降っていないからこその庭でのひと時。


「青ねぇ・・・藍青色の花か・・・・・・」
 花の色を思い浮かべる景時。
「らんせいしょく?どんな色?」
 にとって初の言葉だ。
「あ〜っと・・・・・・どれが近いかな。このシャツより濃い色かな」
 自分が着ているシャツを示す景時。
「薄群青っていう色ですよ、このシャツ。群青色より薄い色」
 が選んだ景時のシャツ。
 もちろん好きな色で、景時に似合う色だ。

「そっか。この色がいいかな?紫陽花の色」
「なるの?この色に」
「そ〜なるように研究させていただきますってね!」
 大きく伸びをする景時。
 が景時の背から腕を回した。

「私の・・・大好きな色なの・・・・・・この色・・・・・・」
「うん・・・・・・オレも・・・好きだよ・・・・・・」





 好きな色に包まれている、大好きな人は?






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 あとがき:6/30の色は『薄群青』でキーワードのひとつは『向上心』なのでした。     (2006.06.27サイト掲載)




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