白百合   4/7





「白百合ねぇ・・・・・・」
「ええっ?!やっぱり景時さんもそういうのが好きなの?」
「は?」
 二人でデートに行く途中、電車の中で突然景時さんが言ったの。
 だって、言った後に口元がにこって笑って。
 男の人って、やっぱりそういうの好きなんだなぁって聞いたのに。
 なんだかまた私の勘違いだったみたい。

「だって・・・・・・あの二人、白百合学園の制服だよ?」
 車窓の向こうを歩いていた女の子たち。
 お嬢様学校で有名な白百合学園の制服だった。
 そう、いわゆる女子高、女の花園。
 私も知らない世界なのよね。

「ああ!そういう事。オレが見たのは看板の文字だったけど、
偶然だね。その学校の子も歩いていたんだ〜。そりゃそうだね。
看板ある地域の子しか通えないだろうし」
 景時さんは背が高いし。
 吊り革というか・・・手すりにつかまって上の方を見ていた気もする。
 じゃあどうして笑ったのかな?
 でも、このまま流しちゃおうかな〜と迷っていたら。

「それで?やっぱりそういうって・・・どういう?」
「はううぅぅっ!」
 知りたがりの景時さんが聞き逃す訳も無く。
 話は振り出しに戻された。
 じゃあ・・・私も聞いてみてもいいのかな?



「男の人は女子高に入れないでしょう?だから、憧れなんだって。
クラスの男の子も、女の子に女子高の友だち紹介しろって必死で。
それに、制服も可愛いから。男の子に人気があるの。それで・・・
そのぅ・・・景時さんも好きなのかなって」
「あははははっ!そういう事か〜。まあ・・・制服はドキドキするね」
「・・・・・・そうなの?」
 やっぱりそうなんじゃないの〜〜〜。
 これからデートだっていうのに、思いっきり景時さんを睨んじゃった。
 そうしたら、景時さんが真っ赤になって窓の方を向いちゃった!
 あれ?赤くなるならさっきだよね?今は制服の子いないし。

「その・・・初めて会った時さ。ちゃんが変わった服を着ていて。
聞いたら制服って教えてくれたでしょ?今ならわかると思うけど、
オレがいたトコであんなに短い着物はなかったから・・・さ」
 制服について知っていた理由はわかるんだけど、顔が赤い理由は
わからなくて。
 ついつい首を傾げて景時さんを見上げていたら。

「いや・・・その・・・可愛い子がちょっと刺激的な格好だったから。
なんていうか・・・決して邪な目で見ていたわけではないんだけど、
違うわけでもなくて・・・あはははははっ!」
 真っ赤な顔で当時の真相を告白されたら、怒る気力もなくなって。
 だって、今日だってミニだもの。
 春は軽いのが好きだから。

「だって服が勝手にあんな風になっちゃってたし。下だけ制服だった
から、上はどこに行ったんだろ〜って。実際、着物じゃ動き難かったから
いいんですけど。普段から着ていたもので私には違和感がなかったし。
・・・そうじゃなくて!どうして白百合って呟いて嬉しそうだったんですか?」
 こうなったら直球勝負!
 誤魔化し無しでそのまま質問をしてみた。

「あ、あれ〜?そんな顔してた?そうかな?」
 またまた今度は耳まで赤くなって。
 気になるぅ〜〜〜!

「嬉しそうでした。それに、耳まで赤くって。何を想像してたんですか?」
 ちょっとだけ強い口調で問い詰めた。


「まあ・・・制服のスカートにも関係あるといえばあるんだけどさ」
 私の方を向いてくれた。
 だけど、真剣な顔になっていて。あれれ?
「制服に関係ある・・・・・・」
「色がね。戦の時、真っ直ぐに立っていた姿勢と制服の白が白百合のようだなと、
そんな事を考えていたんだよね。それは儚げではなく、真っ白な強さの象徴に
見えたというか。後姿が格好よくてさ・・・・・・」
 あのぅ・・・女の子に格好イイって・・・何回も言われてたケド。
 そういう意味もあったんだぁ・・・・・・。

「格好イイより可愛いの方がいいな〜〜〜」
 景時さんの腕に掴まった。
「う、うん。もちろん可愛い。ほんとに」
 電車でいちゃつくのもなんだけど、これからデートなんだもん。
 いいよね?



 私もね、景時さんと初めて会った時に思ったよ?
 姿勢がぴんとしていて格好イイの。
 背が高い人は周囲にたくさんいたけど、景時さん特別に見えた。
 空の青にとけそうで、洗濯物の白さがきらきらして見えた。
 秘密って言われたから、余計にドキドキした。
 
 勝浦の浜辺ではもっとドキドキしてたんだけど。
 花火のお陰で気づかれなかった・・・と思う。
 

「景時さん。夏になったら、百合をみに行きましょうか?春も咲くけど、夏の
方がイメージなんです」
「百合かぁ・・・いいね。夏は花火もしようね?」
「はいっ!」
 もしかして、気づかれてたのかな?





 真っ青な空の下で、真っ白な百合が見たいなと思った春───






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 あとがき:4/7の色は『白百合』でキーワードのひとつは『創意工夫』。景時くんの発明好きは『多才』の方がピッタリ?!     (2007.05.13サイト掲載)




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