おやつを届けに





 その日は、天気もよく、お洗濯も捗り。
 おやつ作りも終って、裁縫をしていた

 カサカサッ───

 簀子を何かが歩く音がした。
「モモ〜、どうしたの?」
 気になってが簀子まで出ると、モモが背伸びの姿勢で立っている。
「ん〜?」
 何かがこちらへ近づいてくる。
 物体を認識した時には、もうの肩に乗っていた。
「あれれ?チョビ。景時さんのおつかい?」
 首を横に振るチョビ。
「違うの〜?じゃ、何かあった?」
 またも首を横に振る。チョビを手に乗せ、頭を撫でる。
「わかった!おやつをねだりに来たのかな〜?」
 万歳のポーズをするチョビ。
「そっか。じゃ・・・今日は天気がいいから。私も行こうかな!」
 チョビを簀子へ下ろす。
「少しモモと待っててね。朔〜、景時さんの所へおやつ届けに行って来る」
 台所へと駆け出した

 朔が部屋から出てくる。
「一人じゃ駄目よ。誰か呼ぶから待って」
 そこにはもうの姿はなかった。
「モモ!私が誰か連れてくるまでを引き止めてね」
 朔が慌てて奥へ去って行った。



 その頃の。苦心作のおやつがお披露目できる。
「冷蔵庫がないから、大変だよね〜」
 有川兄弟は、最近九郎を手伝っていて忙しい。
 家を守るとしては、最初に覚えたのは台所仕事。
 下働きの者もいるが、その日の献立を考えたりするのはがしたかったのだ。
 それに、気まぐれに帰って来る家人へのおやつの準備は欠かせない。
「んふふ〜v喜んでくれるかな」
 少し多めに持つと、庭ヘチョビとモモを迎えに行く。

「チョビ〜、モモ〜、行くよ〜〜」
 声をかけても飛んでこない二匹。
「あれ?」
 仕方がないので、近くまで歩いていくと二匹が欄干の上に居た。
「早く〜!おやつの時間に間に合わなくなっちゃうよ?」
 首を横に振る二匹。
「どうしたの?」
 が二匹を手に乗せようとすると、朔が簀子を早足で歩いて来た。

!駄目よ一人でなんて。警護の者を頼んだから、少し待って」
「え〜、大袈裟だよ。通りを出てすぐの距離だよ〜」
「駄目です!何かあったら大変でしょう?もう来てくれたわ」
 庭の入口に、若い武士が膝をついて控えていた。
「平気なのにぃ。じゃ、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
 朔に送り出されて梶原邸を後にした。



 家を出て、おしゃべりしながら歩くと、まもなく九郎の邸に着いた。
「えっと、もう平気ですよ?お仕事の邪魔をしてすいませんでした」
 が警護の者に頭を下げる。
「いえ、景時様に会うまではお供させていただきます」
「え〜!それじゃ悪いですよ」
「朔様から仰せつかっておりますので・・・・・・」
 が首を傾げる。
「あ〜、朔が。心配症だな〜。じゃあ行きましょうか!」
 九郎たちが居る部屋は知っているので、門の警備の武士に挨拶すると
は勝手に歩いて行った。

「九郎さ〜ん、こんにちは」
 部屋の入口で声をかける。
「は?!か?」
 九郎の声がするが、戸を開けてくれたのは弁慶だった。
「弁慶さん、こんにちは。景時さん居ますか?」
「いえ、すぐに戻ってきますが。どうしたんですか?急用でも・・・・・・」
 後ろの若い武士の手を引っ張り部屋へ入る。
「あのね、チョビがおやつ食べたいって家に帰ってきたから。今日はお仕事
たくさんで大変だったのかなって。おやつ持って来たの!」
 の手にある包みに視線が集まる。隣の若い武士も何やら持っている。
「・・・皆の分もあるよ?」
「お茶と器の用意をしましょう」
「あ!椀ぽいのとお皿の両方欲しいです」
 頷くと、弁慶が部屋を後にした。
「・・・変らないな、は」
 溜息とともに、九郎が書状などを端へ寄せた。
「え〜!変ったんだよ、お料理上手になったのにぃ。失礼しちゃう」
 手の包みを、広い文台へ置いた。
「・・・そいつは誰だ?」
「あ!ごめんなさい。お家の警備してくれてる人で国房さん。ひとりで歩いちゃ
駄目って朔が・・・・・・」
 手の荷物をに倣って文台へ置くと、九郎の前に膝をついた。
「源氏の傍系ではありますが、梶原邸の警護の任を受けて・・・・・・」
「九郎さんにそんなのしなくていいの!私の為について来てくれたんですから。
九郎さんも、そういう言い方したら駄目だよ」
 挨拶をによって中断させられ、双方中途半端な状態となる。

「皆でおやつしましょ〜。休憩しないと、頭がリフレッシュしないですからね〜」
 が包みをさっさと開け始める。
「それに、早く食べないと駄目な気がする」
「そんな変なものを持ってきたのか?」
 九郎が嫌そうな顔をする。
「ほんと失礼しちゃうな〜。おいしいよ、きっと。つるつる〜んなんだから」
「それは楽しみですね」
 入口から弁慶の声がする。
「わ!弁慶さん、早かったですね〜」
「ええ。譲くんと会いましたので。彼もすぐに来ますよ」
 が蓋を取る。
「じゃ〜ん!のスペシャルイチゴゼリー。・・・寒天だけど」
「寒天・・・ですか」
 赤い色の物体に、弁慶も目が離せない。九郎に至っては無言である。
「とぉ〜っても美味しいですよ。ちゃんと味見したもん。蓮華で食べるのがちょっと
違和感だけど」
 きれいなガラスの器は高級品だ。まして、この時代では透明度が高くはなく、
のイメージするふるふるなゼリーの飾りつけは出来ない。
 蓮華も譲の苦心作を梶原邸から持参した。
 器に取り分け並べていると、将臣と譲が部屋へ入ってきた。

「お!にしちゃ気がきくな〜」
「・・・将臣くんはいらないって事なのかな?」
 の片眉が上がる。
「嘘だって。何食わしてくれんの?・・・・・・なんだ、それ。イチゴの固まりなのか?」
 将臣の手が引っ込む。
「昨日のイチゴですね!」
 譲にはわかったらしい。
「そうなの〜。気分はイチゴゼリー。あとね、ロールケーキも焼いたの」
「先輩、本当に上手になりましたね!牛乳寒にイチゴを入れてもよかったかもしれ
ませんね」
 譲と手を取り合って飛び跳ねる
「でしょ〜、でしょ〜!譲くん、もっと皆に言ってよぉ〜。変なもの見る目だよ、あれは。
でも牛乳の方が栄養もあったね!次はそうするね〜」
 が九郎と弁慶の方へ視線を向ける。
「大丈夫ですよ。食べればわかることですし。じゃあ僕がいただきますね」
「うん!食べて」
 はロールケーキをチョビとモモに切り分けた。
「お待たせ〜。イチゴのケーキだよ」
 前足でケーキを持って食べ始めるチョビとモモ。
「可愛い〜vまだあるからね。あ!国房さんはどっちが食べたいですか?」
 戸口に控えていた国房の目線が揺れる。
「いえ、私は・・・・・・」
「駄目です!ここまで一緒に来てくれたんですから。どっちですか?選ばない人は・・・
両方です!」
 が微笑むと、国房が息を飲んだ。
「もぉ〜、そんなところに立っていないで。ここで食べて下さい」
 腕を掴まれ、無理矢理座らされる。
「譲くんは知ってるよね?」
「ええ。いつも庭で会いますし。時々稽古もつけてもらってるんだよね、兄さん」
 譲が将臣の方を向く。ケーキを齧りながら将臣が首を縦にふる。
「なんだ〜、将臣くんとも知り合いなんだ。じゃあ譲くん、国房さんに両方ね!」
 譲に国房を頼むと、は九郎へ近づく。
「どうして九郎さんだけ食べてくれないかな〜」
「別に俺は・・・。そう、腹が空いていないからだ!」
 の視線が痛い九郎。
「九郎。この寒天はイチゴも入っていて、とてもおいしいですよ」
 弁慶がの腕前をさり気なく褒める。
「弁慶さんも認めてくれた味なんだけどな〜」
 首を傾げながら、九郎を見る。目を離した方が負けのような雰囲気。
「あれだ。敦盛もいないし。俺は遠慮させて・・・・・・」
「私が何か?」
 敦盛が部屋へ入ってきた。
「敦盛さん!こんにちは。おやつ食べて下さいね」
 敦盛に挨拶をすると、また視線を九郎へ戻す
 座って膝が付く寸前の距離で見詰め合う二人。両者譲らず。
 そこへ景時が戻ってきた。

「ね〜、九郎。大宰府の・・・・・・ちゃん?!何してるの、二人で!」
 景時の目が、九郎とだけを捕える。
 の背中側から脇へ手を差し入れ、九郎から引き離す。
「ちょっと〜、こんな近い距離で見詰め合うってどういう事よ?」
 景時の口から珍しく本音が零れた。
「な、誤解するな!そいつが・・・・・・」
 九郎が真っ赤になって照れる。
 よく考えたら、女性と膝が付く至近距離に居たというわけだ。
「景時さんだ〜。お仕事お疲れ様です。おやつ持ってきたのに、九郎さんが食べないっ
てごねるんだもん。失礼しちゃうでしょ?上手に出来たのにぃ」
 見れば文台に広げられた物と、何やら見知った顔が。
「あれ?国房。今日は・・・・・・」
 思い当たりの顔を覗く。
「天気がいいから景時さんにおやつ届けたいな〜って。久しぶりに皆の顔も見たかったし。
そしたら朔がね、ひとりで行っちゃ駄目って。国房さんがついて来てくれたの」
 皆の前だという事も忘れ、をくるりと回して抱きしめる景時。
「君に何かあったら、オレ耐えられないよ〜〜〜」
 梶原邸の者ならば見慣れたこの光景も、九郎には免疫が無い。
「何だよ、九郎。いつもこんなもんだ、この二人は。わかったらのいう事は早めに聞い
たほうがいいぜ?景時が壊れるから」
 今度は寒天を食べている将臣。九郎の分の寒天を差し出す譲。
「景時が壊れるって・・・・・・」
 言葉の意味がわからない。しかも、うっかり寒天の器を受け取っていた。
「勇気があるならの手でも触ってみれば?」
 将臣がニヤニヤしながら九郎を嗾ける。
「兄さん!そういう悪戯は考えなくていいですっ」
 譲が将臣を嗜めた。顔はかなり引きつっている。
「そういうことですか・・・・・・」
 何かを察した弁慶の顔が笑っている。敦盛は、さり気なく距離を取った。
「何だ、それくらいの事で何が・・・・・・」
 この辺りが子供の九郎。よくわかっていない。
 見れば景時は、もう寒天を食べている。気にせず九郎も食べ始めた。

「チョビ。もう少し食べる〜?」
 食べ終わっていたチョビに話しかける。チョビは万歳のポーズで答える。
「あと少しだけだよ〜?」
 からケーキの欠片をもらう。また食べ始めるチョビ。
「ほんっと。可愛いなぁ〜v」
 が二匹を眺めていると、景時がの手を掴む。
「オレは?」
 また始まったかという反応と、何事かという反応に分かれる周囲の面々。
「え?景時さんは、格好いいんだよ?」
 微笑みながら答える
「そうかな〜?」
 安心したかの様に、再び食べ始める景時。その時、思い出したのだ。
「ちょっと待って。国房は、ちゃんと歩いてここへ来たんだよね?」
 景時の視線が国房へ注がれる。
 素早く景時の前へ移動し、平伏す国房。
「あ〜、景時さんたら。駄目ですよ?国房さんは、私がひとりで歩いたら危ないからって荷物
まで持って一緒に来てくれたんですよ。ありがとうです!」
「そ、そうだよね〜。ありがとうね、国房」
 の隣を歩いた事実が許せないが、愛する妻のいう事に景時が逆らえるわけがない。
 引きつる笑顔でお礼を述べておく。
「国房さん、おやつどうでした?」
 が国房の顔を上げさせた。
「は!大変美味でした・・・・・・」
 景時の顔色を伺いながら、奥方にも逆らえない。
「よかった〜。夏とか固まらなさそうだもん。今だけの楽しみかもだしね。九郎さんは?美味
しい?」
 九郎の器は空だった。
「・・・・・・悪くはなかった」
 が九郎の隣に座る。
「全部食べたんでしょ〜。そういうのは美味しかったですって言うのぉ〜」
 が九郎の膝を叩いた瞬間、九郎の視界から消えた。

 振り返ると、を抱えた景時。
「・・・・・・九郎。ちゃんに触らないでくれるかな。しかも悪くないって、失礼だよ。どういうつ
もりなのさ?」
 を自分の膝に座らせ、九郎を睨みつける景時。
「・・・いや!美味しかった。本当だ!!!」
 九郎が弁慶をつつくが、無視された。
「景時さん?いいんですよ、九郎さんは照れ屋さんだから。悪くないっていうのは、ほんとは美味
しかったって意味ってわかってるし」
 景時の腕を軽く叩く
ちゃんは優しいね〜。ほんと、九郎は素直じゃないよね!うん」
 先程までの形相はどこへ?と思わせるほどの豹変ぶり。
 九郎も学んだようだ。景時の異常なまでの焼もちを。

「そういえばさ。駄目でしょ、こんな所へ来たら」
 こんな所ってなんだよとツッコミしたいが黙っている一同。経験は人を成長させる。
「だって。景時さんが疲れてないかなって。チョビがお腹空いた〜って帰ってきたから。来ちゃったv」
 の必殺技が炸裂した。上目使いの笑顔で景時を攻撃する。
「オレなら大丈夫!ちゃんと毎日早く帰ってるでしょ?そりゃ九郎が仕事増やしてくれたりする日も
あるけどね?」
 九郎本人が居る前で、ぬけぬけと言ってのける景時。しかもの髪に口づける。

(鼻血男だったくせに・・・・・・いつの間に!)
 有川兄弟と弁慶の頭の中を覗くならばこんな感じ。

ちゃんが待ってるかと思うと、頑張れちゃうんだよね〜」
 さらに、に頬擦りする始末。
「じゃ、美味しい夕ご飯用意して待ってますね!帰らなきゃ」
 が立とうとしても、腕を離さない景時。
ちゃん帰っちゃうの〜?オレと帰ろうよ。ささっと仕事終らせちゃうから」
 ささっと出来るなら、言われなくてもして欲しいと思う九郎と弁慶。しかし、ここでも黙っておく。
「え〜?朔ひとりじゃ大変ですよ?駄目です」
 景時の腕を叩く。しかし、力は緩まらない。
 
 ここで弁慶が何もしないわけが無い。点数稼ぎはお手の物。
「そうですね。今日は譲くんの仕事はもう大丈夫ですね。国房・・・ですか?こちらの荷物をお願いし
ますね。譲くんがいれば、朔殿も文句はないでしょうし。もしもの時は、僕のお願いだと言っていた
だければ」
「じゃあ、もう少ししたら片付けて先に帰らせていただきます」
 譲が承諾した。
「え・・・それじゃ悪いですよ。私が来ると、迷惑かけちゃいますね・・・・・・」
「そんな事ないですよ。おやつ、とても美味しかったです。確かに今日は忙しくて、誰も休憩していな
かったし。さんのおかげで、これから仕事が捗りそうです。ね?九郎」
 が気にする前に、その場を上手く弁慶が取りまとめた。


 景時の不安。手に入れると、失くすのが怖くなる。
 が自分から離れる、自分以外を見ているのが嫌でたまらない。
 世間では焼もちという名のそれ。
 周囲は巻き込まれないよう細心の注意を払わなければならない。
 

「えっと。弁慶さんのお許しが出たし。譲くん、今日は久しぶりにアレ食べた〜い!私じゃまだ出来な
いもん。白龍も大好きなんだ、オムライス!」
 が譲に本日の夕飯をリクエストした。
「あはは。わかりました。久しぶりに腕を振るいますね」
 器を片付けながら、譲は快諾した。
「景時さん、お仕事手伝える事ありますか?早く終ったら一緒に手を繋いで帰りましょうね」
「え?」
 景時の腕が緩んだ。が抜け出して、膝立ちで景時を抱きしめる。
「だって、最近二人でお出かけしてないじゃないですか〜。だから!」
 景時の手を引いて立たせる。
「早く、早く!早く終ったら、寄り道も出来ちゃうかもですよ!」
 急かす
「あ、そ、そうだね!うん、早く仕事しよ〜〜」
 景時とが、景時の仕事部屋へと歩いて行った。
 チョビとモモも二人の後を追う。



「九郎?もう少し人の感情に敏感になった方が良さそうですね?」
 弁慶がやんわりと九郎を責める。
「お前、俺をしっかり見捨てといて・・・・・・しかし、景時のあんな顔は初めてだったな・・・・・・」
 九郎が思案顔だ。
「いつもだよ、アレくらい。なあ?」
 書状に目を通している将臣。
「まあ・・・そうですけど。兄さんはもっと怖い思いしたみたいですし。景時さんって、先輩が絡むと普段
と全然違うんですよね〜」
「でもまあ、があの通りだから。最後にはご機嫌なんだけどな。巻き込まれたら大変だぜ?」
 将臣が書状を敦盛へ渡す。
「これで大丈夫だろう。後は頼むな」
「はい。手配します」
 敦盛が部屋を退出した。
「・・・・・・将臣は、俺を巻き込ませようとしたわけか?」
 今頃気がつく九郎。
「偶にはいいんじゃないかなと。最後はものすごいイチャイチャになるから。少しは免疫つけとけよ!」
 九郎の肩を叩くと、将臣も部屋を出て行った。
「免疫って・・・・・・」
 九郎が真っ赤になった。
「ほら、免疫が必要そうですね?」
 弁慶は、景時が置いた書簡に目を通しながら九郎をからかう。
「それでは、俺たち帰りますね」
 譲が国房と包みを持って帰って行った。



 景時の部屋で、書状の分類を手伝う
 宛名くらいはどうにか読めるが、内容までは厳しい為だ。
 仕分けが終わり隣を見ると、書状を読む景時の横顔が目に入る。
(うわ〜。やっぱり景時さん格好いいよぅ!)
 が見つめていると、視線を感じたのか景時がの方を向く。
「どうしたの?読めない字でもあった?」
「ううん。分け終わったんだ〜」
 突然の唇を啄む景時。
「ありがと〜。先に読むのだけ目を通しちゃうからね〜」
 が分けた一番右の束だけ手に取る。
「・・・景時さん、イチゴ味・・・・・・・・・・・・」
 がぽーっとしていると、再び口づけられた。
「美味しいイチゴのおやつ食べたからね!」
 また書状を広げて読み始めた。
(うわ〜美味しいおやつだって!うふふ)
 、心でガッツポーズ!
 隣では仕事がし難いだろうと思い、少し離れてチョビとモモを眺める。
 二匹寄り添ってお昼寝中だ。
「可愛いなぁ〜。ラブラブだね!」
 そっとモモの背中を指で撫でた。
 そのまま引き込まれるようにも座ったままでうたた寝をしていた。



ちゃん?あらら。退屈させ過ぎちゃったかな」
 今日中に返事が必要な書状は無い様なので、切り上げる事にした景時。
 の身体が揺れているのが目に入る。
 そっと近づいたつもりだったが、が目を覚ましてしまった。
「あれ?眠っちゃったんだ〜」
 目の前では、チョビとモモが追いかけっこ。
 文机を見ると、景時の姿は無かった。
「れ?景時さん?」
「何?」
 の後ろから声がした。
「景時さん!」
 景時に飛びつく
「置いていかれちゃったかと思った〜〜」
「そんな事しないよ〜。眠っていたから、倒れる前に抱えようとしたらちゃん起きちゃうんだ
もんな〜。惜しかった!」
「もう!」
 が景時の背中を叩く。
「帰ろうか?」
「うん!寄り道しよ〜」
「それは無理かな〜」
 と一緒に立ち上がる景時。
「駄目なの〜?」
 首を傾げる
「じゃなくて。遅くなるとオムライスが冷めちゃうんじゃないかな〜」
「あ!そっか。譲くんに悪いもんね。じゃあ・・・・・・手を繋いでゆっくり帰ろ〜〜」
 が手を出すと、景時が手を取った。
「御意〜〜!チョビ、モモ行くよ〜」
 チョビは景時の左肩へ、モモはの右肩へひらりと飛び移る。


 夕方、家を目指して歩く二人。
 帰る場所は同じ。
 
「また時々おやつ届けに行きますね」
「そうだなぁ・・・今度はオレが迎えに行くよ?」
「それじゃ驚いてもらえないから、意味ないよぅ〜」
「でもなぁ・・・・・・」
 の隣は、常に自分でありたい景時。
ちゃんと誰かが歩くの嫌だなぁ〜なんて」
「え?」
 の足が止まると、景時の足も止まった。
「今日だってさ、国房と歩いて来たんでしょ?」
「そうですけど・・・・・・手を繋ぐのは景時さんだけだよ?」
「隣だってオレ以外は嫌かな〜なんて」
「・・・・・・焼もちですか?」
 初めて景時の焼もちがわかった。景時を見つめると、景時の視線が空へ向けられた。
「そ。何だか駄目みたいなんだよね〜。こう・・・胸が痛いっていうか・・・・・・」
 がまた歩き出す。
「それは私の事が『好き』っていう気持ちがいっぱいって事ですよね!」
 手を引かれて歩き出す景時。
「・・・・・・うん」
「景時さんが痛くなっちゃう『好き』にならないように気をつけますね〜」
 が景時を振り返り笑う。
「・・・・・・ごめん。オレが間違ってる」
 景時が項垂れた。
「間違ってないですよ?景時さんが自分の気持ちを誤魔化そうとしたら、間違いですけど」
「・・・・・・誤魔化す?」
「景時さんって、平気なフリが上手だから。私って奥さんなんですよ?景時さんに一番近い
場所にいるんだから。嘘はわかっちゃいますよ〜?皆でおやつが食べたい時は、迎えに来
てくださいね」
 少し早歩きでの前に行く景時。
「・・・・・・いいの?」
「だって、一緒に歩けるでしょ?」


 いつだって君には敵わない。
 何でも楽しい方へ考えるのが上手。
 楽しい約束が増えたね。ちゃんのおやつ!
 家で食べるのもいいけど、皆にも食べさせてあげよ〜。
 君を閉じ込めたい訳じゃないから───
  
 





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おやつは楽しい♪景時くんは吹っ切れたら、ただの焼もち妬きでした(笑)     (2005.3.22サイト掲載)




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