Silent Night 〜at midnight〜 (景時編) 「そろそろ冷えてきたね。お風呂・・・先に入っておいで?」 窓辺のソファーの足元にも、それとわかるほどの冷たい空気が流れ込んでくる。 ゲレンデの風景も照明が煌びやかなものから、ただの明かりに変わってしまった。 「その・・・時間・・・かかりますよ?」 女性の風呂は長いものだ。景時が先がいいのではと思う。 「いや・・・ちゃんが先・・・・・・」 の額へ優しくキスをひとつすると、大人しく頷いてバスルームへ消えた。 「指・・・冷たくなっちゃって・・・・・・」 繋いでいなかった左手に触れたとき、その指先が冷たくて、もっと早く気づくべき であったと思ったのだ。 「オレってダメだなぁ・・・朔に怒られたっけね」 「ダメじゃないです!だからっ。・・・・・・景時さん。一緒に・・・入りましょう?」 突然背後から声がして振り返れば、が立っていた。 「ちゃん・・・先に・・・・・・」 「お風呂にお湯が溜まるまで時間かかるから・・・先にって思っただけです」 ソファーに座る景時の背からが抱きついてきた。 「あのぅ・・・景時さんも・・・冷たいよ?」 景時の右手に触れる。 気づかれていたのだと景時が苦笑いをした。 「参っちゃったな・・・バレちゃった?」 「うん。私の手が冷たいんだから・・・景時さんもってわかりますよ」 の頬が景時の耳に触れる。 その温もりに安堵する景時。 「・・・そうだね。クリスマスだから・・・いいかな」 「うん」 互いに声は発しなくなっていたが、なんとなくわかるものだ。 バスルームに移動すると、景時が先にバスタブに入る。 に目隠しされたので、大人しく目を瞑っているとが定位置に腰を下ろした。 もういいだろうと、の肩へ顎をのせると目蓋を開く。 「景時さん」 「うん・・・・・・ちゃん・・・大好きだよ」 面と向かっては言えないが、視線が合わなければ気持ちを伝えやすいという事もある。 「大好き」 首だけ振り返るが求めているモノ、唇を触れ合わせるだけの口づけを交わした。 「・・・寒い?」 「寒いです」 ベッドに横たえたに問いかけると、意外な返事をされた。 伸ばされた手に素直に身を預けると、景時を受け止める。 「・・・こうしてれば温かいですよね」 「はは・・・かな」 に触れることは叶わないと思っていた。 けれど、が選んだのは景時だった。 壇ノ浦のあの一瞬にすべてを賭けた時、景時の気持ちは固まっていた。 (君を・・・誰にも触れさせたくないと・・・そう思ったから・・・・・・) が帰りたいと泣いた時、考える事無く共にくる選択をした。 景時が想像し得ない新世界への旅─── 柔らかな体に触れるだけで夢と現の境へ誘われるようだ。 「どうしようか・・・・・・困ったな・・・・・・」 は小首を傾げて景時の耳に触れ、頬に触れ、唇に触れた。 「困らないですよ?・・・離れると寒ければ・・・くっついてればいいんですから」 躊躇している景時の背をの指が滑る。 「湯冷めしちゃうから・・・・・・」 熱が必要な理由がある。 そう。冷めないうちに分かち合わなければならない理由が─── 「そうだね・・・二人だと・・・寒くないんだった」 調子に乗っての顔中にキスをしてから胸元へと唇を滑らせる。 が景時を呼ぶ甘い声を聞きながら夜が更けてゆく。 音無き白銀の世界で、寒さを感じる事はなかった聖なる夜の恋人たち─── |
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一応隠しておく程度の表現でv そう重くなく書きたかったのでサラリと。 (2006.12.27サイト掲載)