十二月生まれの貴女へ 街中至る所がクリスマス。 そりゃあ、イベントも大切だよ。 オレにはイマイチ馴染みが無い行事だろうとも。 ちゃんが笑ってくれるなら何だってしたいし、するけどさ。 それよりも大切な行事があるんだよね。 ちゃんの誕生日という行事が─── 「冬休みぃ〜まで、後少しい〜♪」 愛しの彼女は、自作の歌を歌いながら我が家の台所にいたりする。 困った─── いっ、いや!ちゃんがオレのために食事を作っている事ではなく。 『誕生日』の贈り物が未定という事実が重く圧し掛かる。 「はぁ〜〜〜〜〜、参ったなぁ・・・・・・」 「何が参っちゃったんですか?景時さん!」 ソファーの後から、彼女の香り。 気配に気づかなかったとは!・・・情け無いだろ、オレ。 ふんわりとオレの首に回されたちゃんの腕を掴む。 「なんでもないよ〜?ほら、お腹が鳴ったら恥かしいな・・・とかさ」 「わ!そんなに待たせちゃいました?大変!シチューはすぐに食べられますよ?」 台所へ行ってしまいそうなちゃんの腕を強く引く。 「わわわわわっ!あの、そのっ・・・・・・もう少し・・・この姿勢がイイなぁ〜なんて」 「変な景時さん。お腹鳴っちゃうんでしょ?」 「・・・かもだけど。このままがイイ」 ふわふわのニットのちゃん。 ニットもふわふわだが、ちゃんがふわふわ。 実に気持ちがいい触り心地。あれ?触られ心地か?どっちだ?? その時、耳元に小さな金属音がした。 「あ・・・・・・」 ついちゃんの胸元へ手を伸ばす。 青い石のトップがついているペンダント。 「どうしたんですか?」 「・・・コレ・・・キレイだね」 真意を誤魔化すために褒めてみた。 「これ?これは・・・・・・お守りなの。ママが買ってくれて。いつか、これとオソロイの石の ピアスを買いたいな〜って。私の生まれ月の宝石なんですよ」 その青い・・・いや。空色の石は『ターコイズ』。危険を知らせる石ねぇ・・・・・・。 「えっとね、誰かにプレゼントされると幸せになれるって言い伝えがあるからって、ママが 高校生になった時に買ってくれたんです。これがあったから・・・・・・今があるのかなって」 照れくさそうに、だけどしっかりと告げる君の笑顔は眩しかった。 「あ、あの・・・その石のアクセサリー・・・・・・オレもちゃんに贈りたいな・・・・・・」 遠まわしなんて失敗しそうだから。まっすぐ正直に気持ちをぶつける。 「えっ?!えっと・・・・・・はい。でも・・・・・・」 「オレからじゃ迷惑?ピアスが欲しいんだよね?」 そう、さっきそう言ってた。ピアスかぁ。耳に穴開けちゃうんだ。 痛い話だな・・・・・・。ま、ちゃんなら何しても似合うだろうし。 オレがついてるからねっ! 「ちっ、違うの・・・・・・景時さんからは・・・・・・指輪・・・もらいたいなって・・・・・・」 ・・・・・・しまった。オレとした事が。 だから朔に叱られるんだよな〜。女の子に言わせちゃうなんてさ。 「もちろん!指輪・・・受け取ってくれるの?特別って思ってもいいの?」 「はい。あの・・・・・・図々しいって・・・・・・」 「そんな事思ってないから!って、いうか・・・・・・既にそっちは用意済みだったり・・・・・・」 「えっ?」 誕生石も、婚約指輪も知ってるんだ。ただね、まだ早いかなって。 ちゃんに断られるのが怖くて机に隠したままの指輪がある。 素早く取りに行って、箱をちゃんの前で開ける。 「少し早いけどさ・・・お誕生日おめでとう、ちゃん!それと・・・オレと将来の約束のシルシ」 間違えないように、ちゃんの左手をとって指輪をはめる。 「やっ、やだ・・・どうしよ・・・・・・どうして?どうしてあるの?」 「そりゃあ・・・ずっと渡しそびれてたのと・・・色々・・・・・・」 ちゃんを抱き締めて、幸せ満喫の休日の昼下がり。 「でもさ、ピアスは一緒に買いに行こう?これは・・・約束のシルシで。ピアスは幸せのシルシに」 黙って頷くちゃんが真っ赤になっている。 可愛い耳にキスをする。 お誕生日おめでとう。オレはいくらでも待つからね?ゆっくり大人になろうね。 |
Copyright © 2005- 〜Heavenly Blue〜 氷輪 All rights reserved.
あとがき:ターコイズは危険を知らせるとか、持ち主を守る石らしいです。 (2005.12.21サイト掲載)