十月生まれの貴女へ 「秋だねぇ・・・・・・」 夏の暑さもようやくおさまった天気が続く。 「まあな〜、地球温暖化で京より暑いくらいかもな。そういやそろそろだな?」 「・・・何が?何かあったっけ?」 本日、景時と将臣は買い物に来ていた。 ただしくは、景時の買い物に将臣が付き添ってくれている。 「・・・んだよ。ソファーが欲しいっていうからの誕生日のプレゼントかと思ったぜ」 「ええっ?!ちゃんの何?それって何?」 将臣の両目が見開かれた。 「まさか誕生日を知らねぇとは思わなかったな。あれだ、の生まれた日」 簡単に説明する将臣。 「へ〜、それは。うん。そうなんだ。秋に生まれたのかぁ・・・・・・穏やかな雰囲気でいいね」 「・・・景時のトコでは・・・・・・ああ。そうだったな。あっちは全員元旦か・・・・・・」 景時が知らなくても仕方ない。 日本でも昔は誰もが年明けに年齢を重ねるという考えだったのだ。 「こっちではな、それぞれが生まれた日にお祝いするんだよ。でな?贈り物をしたり、 パーティーしたりとか。場合によっては恋人と二人で楽しく過ごすとかな」 将臣は、“恋人”と“二人”を強調した。 「なっ、そっ、それって・・・・・・それより、贈り物って何か決まりあるの?!」 真っ赤になりながらも、必要用件を聞き逃さなかったのは流石である。 「んあ?決まりはないぜ?相手が欲しいモノってのは基本だろ。だからソファーなのかと 思ってたんだ」 「そ、そうなんだ。ソファーはね、ちゃんが雑誌を見ていて・・・その・・・いいなって言ってて。 こっそり家に用意したいな〜なんて・・・・・・」 問題の雑誌の切り抜きを景時が持っている。 そもそも、景時が将臣に電話をしてきたのだ。 『このソファーってどこで売ってるの?!』 『・・・・・・景時。電話で“この”って言われても・・・見えるわけねぇーだろうがっ!!!』 そして現在に至っている。 「思いっきりココに書いてあるしなぁ〜。で?ソファーはソファーとして。プレゼントは考えないとな」 お問い合わせ先にに電話をするまでも無く、協力各社の欄に店の名前が書いてあった。 それで将臣が景時を案内している。 「え〜っと・・・ちゃんにソファーってのは・・・・・・」 「ば〜か。の部屋は狭いし。考えてもみろよ、の部屋に景時がそう行くわけじゃないだろ?」 景時の部屋にが訪れるばかりで、景時がの家に行くのはを送るためだけだ。 「そ、そうだよね。オレのトコでって考えるのが普通だよね・・・・・・」 将臣に言われてしまうのがなんとも照れくさいところだが、二人掛けのソファーなのだ。 が普段一人で座って嬉しいというよりは、景時と二人で座りたいと考えるべきだろう。 「そうだな〜、来週の金曜日か・・・・・・ウチの料理人貸し出すから料理とケーキはデリしてやるよ。 問題はプレゼントか・・・・・・」 勝手に譲に料理を作らせる約束をし、将臣が指を鳴らした。 「そうだ!女どもがよく騒いでたぜ?誕生石のアクセサリーだとよ。頑張って探すんだな」 「ええっ?!将臣君は来てくれないの?!」 「・・・ったりめぇだ!後は自分で考えろ。ソファーの店はソコ。じゃあな!」 あっさり入り口で置いていかれた景時。 「・・・冷たい、将臣君。オレ一人じゃ・・・・・・」 雑誌と同じソファーを手早く購入し、偶然にも近くにアクセサリーの店があると店員と世間話をしながら 情報を得た。 「ここ・・・か・・・・・・」 アクセサリー売り場には、当然ながら男一人という客はいない。 足を踏み入れ難いが、意を決して一歩踏み出す。様子を窺っていた店員が素早く景時に声をかける。 男性客の場合、ほぼ購入のためにしか来店しないからだ。女性客の場合は、眺めに来ている方が多い。 「お客様、どのような商品をお探しですか?」 「あっ、その・・・えっと・・・彼女の誕生日のプレゼント・・・・・・誕生石って・・・・・・」 「それでしたら、こちらに今月のコーナーを設けてございます」 素早く景時を目的の商品が並ぶ一角へ案内する。 「わっ!色が・・・ど、どれがいいのかなぁ〜」 こういう時に頼れる妹の存在がないのが、景時にとって寂しさを思い起こさせる。 「そうですね・・・どんな印象の方ですか?」 「可愛くてカッコイイんです!」 即答の景時に店員の方がつい笑ってしまう。 「でしたら・・・オパールではなくて、ピンクトルマリンでスッキリとしたデザインがよろしいですね」 「えっと・・・こっち?」 「はい。誕生石と申しましても、由来も色々なので一種類とは限りませんから。宝石言葉はこちらですと、 “心中の歓喜”というものもございますよ?」 オパールも悪くは無いが、どうも若者向けでは無い。景時の風貌からして相手は若い女性と思われる。 手でピンクトルマリンが並ぶ方を指し示した。 「ですよね〜!ちゃんにピンクはピッタリだし。うん、何がいいかな〜」 景時も納得して陳列されている宝石群から選ぶことにした。 「こ、これは変ですか?」 クロスについた天使の羽にハート型のピンクトルマリンが中心におさまっているデザインのペンダントを指差す。 「はい。こちらは人気ですよ?おそろいでピアスもございます」 「えっと・・・ピアスは無理・・・かな?してないみたいだし・・・・・・」 の耳にはいつも何もついていない。けれど─── 「やっばりピアスもお願いします。両方!包んでください!!!」 景時の勢いに押されるままにへの贈り物は包まれ、用意された。 「気に入ってくれるとイイなぁ〜。だってさ・・・・・・」 『ピアスすると運命変わっちゃうって友達が言うから、したいけど出来ないんですよね〜』 『そうなの?』 『はい。景時さんと・・・離れたくないし・・・・・・』 デートの途中で寄ったアクセサリーショップでが言っていたのだ。 「大丈夫!今は恋人だけど、オレの奥さんになるっていう運命に変えてもらうから!」 小さな紙袋を大切に手で持って家路を急ぐ。 午後にはも遊びに来るはずだ。 「見つからないように当日まで隠しておこうっと!」 お誕生日おめでとう、ちゃん。 ピアスね、気にしていたけど・・・オレの嫁さんっていう運命ならイイと思わない? |
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あとがき:和名が『電気石』っていうのが景時くんポイと笑ってしまいました。 (2005.12.03サイト掲載)