長月生まれの貴女へ 「芙蓉が観たいなぁ・・・・・・譲くん家の庭にあったよね」 「はあ・・・・・・そういえば、そんな季節になりましたね」 日中の暑さ厳しいながらも、夕暮れに蜻蛉が飛び交う。 夏の終わりを告げる、そんな季節。 「あ・・・先輩。先輩の誕生日って・・・・・・」 「譲くん?!」 譲が簀子から駆け出した。 「変なの〜。ね?白龍」 白龍にはどうでもいい事らしく、首を傾げるだけで再びお菓子を頬張りだした。 「。明後日がの誕生日って、本当なの?」 「へ?誕生日って・・・・・・どうして朔が知ってるの?」 早足で簀子を歩いてきた朔を振り返る。 「どうしてって・・・・・・譲殿が暦を見せてくれって、それで誕生日について教えてくれたのよ」 「あ〜〜〜、そっか。夏も終わりだもんね。・・・夏休みもオワリの頃かぁ」 いつも夏休みが終わると誕生日だった。 この世界には夏休みが無いため、自身忘れていた。 「夏・・・休み?譲殿が“けえき”を焼くって言ってたわ」 「ケーキかぁ。よかったね、白龍。明後日のおやつは豪華っポイよ〜」 軽く隣の白龍の頭を撫でた。 「もう!の話よ?おやつじゃないのよ」 「そうは言ってもさ、まだ戦の最中だし」 京へは一度戻ってきただけで、戦の決着が着いたわけではない。 「・・・・・・今は敵の動きを探るだけで、出陣の気配はないわ。いいんじゃないかしら」 「だ・け・ど!修行もしないといけないし。町中の封印は済んだけど、少し範囲を広げて 封印に行かないと怨霊も増えてるしぃ・・・・・・っと!」 勢いをつけて庭へ降り立つ。 「戦に関しては何も出来ないからココに居るんだしさ。せめて封印くらいしないとね」 九朗以下、戦の準備に追われまくっている。 西国へ逃げ延びた平氏一門を討伐するだけでなく、三種の神器の奪還もしなくては ならない。相手は帝を連れて逃走しているのだ。 「今日だって封印をしたのだから、そんなに頑張らなくても・・・・・・」 「へ〜きだよ。明日はさ、白龍とリズ先生と行くから。少し遠くまで行って来る」 同行者は毎日変わっても、だけは代りが居ない。 「ごめんね・・・私が封印を出来ないから・・・・・・」 「違うよ〜。私が白龍の神子だからだよ!ソレ関係な〜〜い。ちょっとお部屋でお昼寝 するね〜」 階で靴を脱ぎ始める。 「ズルしてここから上がっちゃお!靴は戻すから、白龍の事お願い」 音を立ててが簀子を走っていった。 「白龍、どうしたらいいかしら?」 「譲のおやつは美味しいよ」 どうも話がかみ合わない。 食べ終わっている皿を片付け始めると、簀子が軋む音がした。 「・・・兄上・・・いつお帰りに・・・・・・」 見上げれば、少しだけ困った様な顔をしている景時。 「う〜んと、帰ってきたのは前なんだよね。そこの部屋に居たというか・・・・・・それで話を 聞いちゃったというか・・・・・・」 朔と目を合わせないように庭へ視線を移す景時。 「ふう。どうしてこう・・・間が悪いのかしら、兄上は」 「そ、そう?ところでさ、芙蓉ってどっちだと思う?」 朔が首を傾げる。 「ほら、唐でいう芙蓉はお釈迦様の蓮だろう?ちゃんが言っていた芙蓉はさ・・・・・・」 「今の時期にというのですから。木芙蓉の方ではないかしら?」 景時が大きく数回頷く。 「だよね〜〜。オレもそう思った!・・・明日は封印休んだら駄目なのかな〜」 景時がまた庭へと視線を移した。 「・・・兄上?」 「ん〜?木芙蓉をね・・・・・・いや、夕方でもいいんだけどさ。一緒に観に行けたらとか・・・ な〜んてね!何でもない。オレね、文献を漁りに戻っただけなんだ」 見れば確かにその手には書物らしきがある。 「じゃ、また行って来るよ」 「・・・・・・いってらっしゃいませ」 景時の後姿を見送り、白龍と手を繋ぐと夕餉の支度をするべく朔も簀子を後にした。 「行って来るね!」 「今日はどこへ行くの?」 朔が尋ねると、 「う〜ん。一応南の方にしようと思ってるんだけど、町中で噂を聞いて方向変えるかもしれ ないから。怨霊がいるってわかっているところからがいいでしょ?じゃあね〜」 元気に手を振りながら梶原邸から封印へ出かける。 たちを送り出してから、朔は溜め息を吐いた。 「私が封印を出来ればよかったのよね・・・・・・」 「さあ・・・それはどうでしょう?白と黒に分かれている事にも意味があるんですよ、きっと。 だから、先輩にとってはどっちがどうでも同じだと思いますよ?朔殿にしか出来ない 事をすればいいって言うだけですよ、先輩は。そういう人なんです・・・・・・。俺、ケーキの 準備しますね」 ぶつぶつ独り言を言いながら台所へ行ったようだった。 「そうよね・・・・・・私も何か作れるかしら?」 気を取り直した朔は、譲の後を追いかけた。 予定では、南。しかし、いきなり怨霊の噂にあたる。 「でさ〜、こう人魂が!」 「嫌だねぇ・・・それじゃあ剣神社の方はいかない方がいいね」 町の人の噂を立ち聞きし、が振り返ってリズヴァーンを見た。 「先生、何だかもう怨霊みつけちゃったっポイんですけど・・・・・・」 「行くのか?」 の頭上から一言しか発しないリズヴァーン。 白龍はと手を繋いでいるだけだけで、意見はないらしい。 「行こうかな〜と。いいですか?」 「神子が望むままに」 この三人だと会話に困る事が多い。 しかし、譲と敦盛に連日頼むわけにもいかないし、朔も疲れが見える。 (・・・将臣くんだよ。肝心な時に居てくれなくてさ) 普通なら三人に同行を頼むのに、源氏以外の人員には限りがある。 五人しか自由に動ける人物は居ないのだ。 三人にすると誰かが必ず連続してしまう。 (やっぱり将臣くんが居ないのが悪いぃ) ヒノエにあたってもよさそうだが、そこは幼馴染の気安さからか将臣が悪いと思い始めて いた時に、見覚えのある背中を見つける。 「景時さん!」 呼べは振り返ってくれるその人物は、の想い人だ。 「あれ〜〜、どうしたの?こっちに用事?」 頭を掻きながら困り顔の景時の様子が、の興味を惹く。 「・・・・・・こっちに何かあるんですか?」 より背の高い景時を見上げながらも、しっかり目を合わせて質問する。 「い、いやぁ〜、そのぉ〜、アレだね!今日はいい天気だよね、うん」 いかにも“誤魔化してます”な景時に、思わずも笑ってしまう。 「景時さん、嘘がヘタ〜〜。ほんとは何ですか?」 景時が溜め息を吐く。 「参ったなぁ〜〜〜。ちょっと調査にね。怨霊のせいだって話なんだけど・・・・・・」 平氏は怨霊を使うのだ。景時が調査に来るのは有り得ない話ではない。 「・・・・・・どうした」 黙っていたリズヴァーンが、景時に問いかける。 「オレが思うに・・・・・・怨霊じゃないな・・・と」 「えっ?!」 が声を上げる。 「人がわざと怨霊がいるように見せかけているっぽいんだよ。つまり・・・・・・罠とか?」 「何の罠なんですか?」 怨霊と聞いて自らわざわざやって来る人物は限られている。 平氏を疑う源氏か─── 「ちゃんをここまで誘い出すためのだよ」 「私ぃ?!」 本気でわかっていなかったらしいが大声を上げた。 「そ。オレが先に着いていてよかったよ〜〜〜。部下たちに調べさせてるからさ。他へ行く なら一緒に行ってもいいかな?」 としてはかなり嬉しい景時の申し出ではある。 だが、ここへ源氏の仕事で来ているであろう景時に頼むわけにはいかないのだ。 「でも・・・・・・お仕事なんですよね?」 「そ〜。でも、オレ待つしか仕事ないもんね。ちょっとここにいてね〜」 近くの部下の所へ走る景時。もう同行する気でいるらしい。 「いいのかなぁ〜〜〜」 景時が部下と話す様子を見ながら、ポツリと声を漏らす。 「・・・問題ない。それに、神子が狙われているのなら八葉がいた方がいい」 リズヴァーンが即答する。 そこへ今までの会話を聞いていた白龍が割り込む。 「神子は私が守るよ」 はしゃがんで白龍の頭を撫でた。 「うん。ありがと。私も頑張るからね」 「お待たせ〜〜って、何?」 と白龍の様子に、景時が首を傾げた。 「えっと、今日も頑張ろ〜って」 大きく伸びをすると、頭の後ろで手を組んで景時が歩き出す。 「頑張る時にだけ頑張ればいいんじゃない?休む時は休も〜ってね!で、こっちでいいの?」 誰も行き先を言っていないのに、景時の足は南を向いていた。 「・・・・・・景時さん、スゴイ。どうしてわかったの?それも陰陽術?」 景時が笑う。 「だったら格好いいんだけど。勘なんだよね〜」 ふらりふらりと歩く景時の背を見ているうちに、の肩の力が抜ける。 (あれ?私・・・・・・・・・) いつもは首が痛くなる。毎日必至に歩いて封印して力が入りすぎていたのだ。 今日は───痛くなっていない。 (景時さんの魔法だぁ・・・・・・・・・・・・) のほほんとしているようで、空気をつくるのが上手い景時。 いつの間にかリラックスさせられていた。 「あ〜、何かいる。嫌だよね〜、ほんと」 前方、もう少しで鳥羽というところで木々がざわめく。今まで晴れていたのに、ここだけ暗い。 「どうしようか〜?まとめていってみる?親玉探す?」 怨霊の気配はひとつではなかった。 一番強い怨霊が周囲の小さな怨霊を操っていると思われる。 「まとめていって、ラスボスもいくぅ〜!」 ロールプレイングゲームではないが、ラスボスにたどり着く前に消耗しては意味がない。 弱い怨霊を一気に薙ぎ払い、親玉と思われる古木の怨霊と戦う。 人の血が我を狂わせるのだ─── 戦で流れる人々の血を吸って古木は怨霊と化してしまったらしい。 とて精霊に戻してやりたいが、穢れた魂は封印しか元に戻す方法がない。 「ごめんなさい!必ず戦を終わらせるから!」 封印の呪を唱え、古木の怨霊を封印した。 森と思っていた場所には、戦火で焼かれて何もない土地が現れただけだった。 「ちゃん。今日は・・・・・・帰ろうか」 俯いたままは首を横に振った。 「今日は・・・・・・四人だから・・・・・・。もっと頑張らなきゃだもん・・・・・・・・・・・・」 景時がリズブァーンを見た。 その視線は、睨むのでもなく、詰るのでもなく、だからといって意味がないわけでもなさそうだった。 「リズ先生。白龍と先に帰ってもらえますか?オレ、ちゃんにお願いがあるんですよね〜」 先に口を開いたのは景時。 リズヴァーンは白龍の手を取ると、来た道を戻っていった。 (・・・・・・すいません。でも・・・あなたは見ているだけでしょう?オレは・・・・・・・・・) リズヴァーンの言う事はいつも正しい。しかし、の判断に従うのが殆どだ。 を気遣っているのもわかる。 が、このような状態になるまで何もしなかったのは八葉全員の責任。 「ちゃん、オレのお願いきいてくれるかな?」 はずっと俯いたままだ。しかし、その首は縦に振られた。 「じゃ、ちょぉ〜っと失礼して。オレさ、ここのところちょっとツライ事多くてさ。こうしてれば誰もオレが 泣いてるなんて思わないかな〜ってね」 ふわりとを抱き締め、頭に頬を寄せる。 「でも、やっぱり恥かしいから、ちょっぴり結界張っちゃおっと」 周囲から音が消えた─── しばらくすると、小さな嗚咽が響く。 (・・・痛い泣き方しないでよ・・・・・・ごめんね、もっと早くこう出来なくて・・・・・・・・・・・・) に課せられた使命は重く、守りたいモノは大きすぎだ。 わかってはいたが、戦の最中でもあり誰にも余裕などありはしない。 (精神的に・・・麻痺出来れば楽になれるのにね・・・・・・) 戦で人を殺める事には景時も慣れた。慣れないのは、騙し討ちの様な誰にも言えない仕事の方。 気づけば、景時も静かに涙を流していた。 「あの・・・ごめんなさい」 泣き止んだが、景時に布を差し出した。 「あ、オ、オレの方こそごめんっ!ちょっと・・・色々たまってたみたいで・・・・・・、コレ何?」 つい受け取ったものの、可愛らしい布だ。 どうしていいのか考えていると、 「ハンカチです。その・・・洗ってあるし、使ってください」 俯いたままのの頭部へ手を添えて、無理矢理顔を上げさせた。 「じゃ、遠慮なく」 そのままハンカチを広げての両目に当てる。 「川があれば顔が洗えるよね〜。少し歩くけど、行こうか」 景時に手を引かれ歩き出す。 「ほ〜ら、ココ。オレ、顔洗ってくるね〜」 手を離されて少し寂しいが、景時が近くに居ないのならばハンカチを取れる。 そろりとハンカチを目から離すと、景時は川へ行っていなかった。 「やっ、なっ!騙した〜〜〜」 が景時を叩く。 痛い程の叩き加減ではないので、いかにもじゃれ合ってるとしか思われないだろう。 景時を追い回す。 「一緒に行こうよ〜〜、ね〜?」 走り回って疲れたのか、が諦めて川岸へ行く後を景時が歩く。 「も、景時さん、ヒドイよ」 バシャバシャと水飛沫を上げながらが顔を洗い出す。 「ヒドイのはちゃんだよ〜、オレ汗だく」 涙どころか汗まで大放出。景時もの隣で顔を洗い始めた。 「むぅ〜〜。騙す方が悪いんですっ」 洗い終わって、顔を振る。ハンカチがあるのに拭かない気らしい。 景時は手拭を出すと、の顔を拭いた。 「これ、まだ使ってないヤツだから半分こね」 使っていない半分の方で景時は自分の顔も拭った。 「・・・ちゃん。さっきの秘密にしてくれる?」 景時がに小指を差し出す。 「・・・もぉ。景時さんてば、秘密がたくさんで覚え切れません!」 もそっと小指を出して、二人は指きりをする。 「じゃ、ついでだからもうひとつお願いしよ〜っと。少し寄り道して帰ろうよ」 今度は、景時が手を開いて閉じてをしながらへ差し出した。 「いいですよ。ついでですもんね」 繋いでもいいのかと手を伸ばせば、しっかりと掴まれた。 「やった〜!ついでのついでにたくさんお願いしよ〜っと」 鼻歌を歌いながら歩き出す景時と少しだけ紅くなり隣を歩く。 「この先にさぁ〜、今の季節ならいいモノがあったハズなんだよね〜」 ぶんぶんと音がしそうなほど手を振って歩く。 いかにも楽しそうな様子に、も安心して笑える。 「いいモノって、何ですか?今の季節じゃないと無いもの?」 「そ〜。それはみてのお楽しみってね!」 歩き続けると、にも見覚えのある場所へ着いた。 「・・・ここって法住寺・・・ですよね?」 「当ったり〜!でもね、ちょっと奥なんだよね」 の知っている三十三間堂ではなく、さらに奥の庭へと歩む。 そこには、芙蓉の花が咲いていた。 「・・・・・・芙蓉だ。こんなにたくさん・・・・・・・・・」 「綺麗だよね〜。これ観るとさ、夏も終わりだなぁって思うんだよね。秋牡丹って 呼ぶ人もいるしさ」 ちゃっかり寺の簀子に腰を下ろす景時。も隣へ座った。 「・・・景時さん。朔に・・・聞いたの?」 何も知らなくてここへ連れてこられるとは思えない。 「う〜んと。実は部屋へ文献を取りに戻っていて、偶然聞いちゃったんだ。 ごめんね?でもさ、間に合ってよかった。夕方だと花が終わっちゃうからね」 景時が笑いかけると、が俯いてしまった。 「・・・・・・ごめんなさい。お仕事・・・サボってくれたんですよね・・・・・・迷惑かける つもりじゃなかったのに・・・・・・」 「それは違うんだよね〜。あの場所で会ったのって、ホント偶然だし。オレね・・・・・・ 神様がお願いきいてくれた気がして、図々しくもちゃんを誘っちゃった」 の前に景時が立った。 俯いていても、影になるのは分かるし、何より景時の靴の爪先が見える。 「オレさ、ちゃんには笑っていて欲しいな〜って。戦してる最中に不謹慎とか 言われそうだけど・・・・・・こうして出かけられたらな〜とか想像したりしてて。でさ、 誕生日っていうのは口実だったりするんだよね・・・・・・ほら。出かけた理由がナイ のもさ、後で聞かれた時に困っちゃうから・・・・・・あはは!オレって、どうしてだか ちゃんには誤魔化せないなぁ〜〜〜」 横を向いて景時がを見ないようにする。 期待して傷つくのが怖いから見ない─── 弱い自分を悟られたくなくて、立ち去ろうとすると手首をに掴まれてた。 「あ、あの。お誕生日って・・・プレゼントがもらえるんです!」 必至に景時を見上げる。 「・・・ぷれ・・・ぜんと?」 「あ゛!」 思わず景時が知らない言葉を使ってしまった事を恥じて、が空いている手で 口を隠した。 「ちっ、ちがっ。そのぅ・・・お誕生日の人は贈り物をもらえるの・・・・・・」 「うん。芙蓉でいいかな?ご住職に頼んでみるから」 景時は最初からそのつもりだったらしく、あっさり返事をされてしまう。 「やっ、その。花は切ったら可哀想だから・・・・・・別のもの下さい!」 図々しく思われようと、今日以上のチャンスはもう訪れない。 必至に景時の手首を掴み続ける。 「え〜っと・・・うん。オレで用意出来るモノなら、何でもいいよ〜ってね!」 いつもの景時の軽い口調に安心して、深呼吸してからお強請りをする。 「今・・・掴んでるのがいい・・・・・・です・・・・・・」 「へ?」 景時の視線がが掴んでいる先へ動く。 「・・・・・・オレの手首・・・だね?これは・・・オレも斬られたら痛いなぁ〜。あ!腕輪? これじゃ大きすぎない?」 必至に告白したつもりが、まったく伝わらずにが脱力した。 「ちゃん?!大丈夫〜?腰が抜けちゃったの?」 景時に抱き起こされ、再び簀子座らせられる。 「・・・・・・景時さんって、景時さんって・・・・・・」 「だぁ〜ってさぁ。こういうのって、男からじゃない?ちゃん、オレと付き合わない? えっとね、今だとちょっと口煩い妹と、鎌倉に母上がひとりと・・・家付きなんだけど」 照れくさそうに景時が頬を掻きながら首を傾げた。 「・・・・・・私・・・何にもないんですけど・・・・・・」 「い〜の!ちゃんが居てくれると、こう・・・ふんわり気持ちイイんだよね。芙蓉みたい」 二人でふんわりと咲いている芙蓉を見つめる。 「・・・・・・あんなに綺麗じゃないです・・・・・・」 「ちゃんは自分の事知らないだけだよ!じゃあさ、手を繋いで帰ろう。明日はみんな、 驚くよ〜。オレがぷれぜんとだもんね。それとも、どこか行く?日が沈むまでに帰ればいい よねっ」 日が落ちると気温が下がり、やはり夏が遠ざかったのだとわかる季節のの誕生日。 贈り物は景時自身と初デートに変更─── |
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あとがき:芙蓉の花言葉は、『繊細な美しさ』らしいです。 (2005.9.27サイト掲載)