皐月生まれの貴女へ それは偶然に知らされた。 いや、ほんと。なんか突然目の前が真っ暗って感じ? 「そういえば、先輩の誕生日ですね今日」 何それ? 「あ〜、今日ってそうか〜。バタバタしてたから自分でも忘れてた」 が手を叩いた。 だから、何それ? 景時、朔、白龍とも首を傾げていると、譲が説明を始めた。 オレの心情としては・・・・・・ 何ですとぉーーーーー!!! 初めて会った時から気になっている、可愛いあの娘の誕生日という、世にもめ でたいこの日に。 オレたち、どうして戦場にいるわけ? 頼むよ・・・ほんと。 神も仏もないもんかな〜? 贈り物って言ったって・・・・・・何も手に入るような場所じゃないし。 「・・・ごめんなさいね。せめて何かしましょう?」 いいぞぉ〜朔。それだ。何が出来るかな? 「あはは!いいよぉ〜、そんなの気にしなくて。だってここ、戦場だし。煩くしたら 九郎さんに大目玉だよ」 その通り!よくご存知で。九郎は真面目だからね〜。 もうすこぉぅし、柔らかな態度をして欲しいな、女の子には。 そうじゃないって。何かないかな、何か・・・・・・。 「じゃあ、先輩の好きなオムライスを夕餉に作りましょうか。流石にここではケーキ やお菓子は無理ですから」 いいなぁ、譲君。料理が出来てさ。 オレは作れないよ、ちゃんが喜ぶ食べ物なんて。 「ずるいわ、譲殿だけ・・・・・・」 朔が珍しく駄々を捏ねる。うん、わかるよ。その気持ち。 「じゃあ、朔には美味しぃ〜お茶を夕餉に入れてもらいたいな。白龍は、譲くんのお 手伝いをしてくれるかな?」 「うん!頑張る!!!」 飛び跳ねて返事をすると、白龍は譲と手を繋いだ。 朔も白龍も、羨ましいよ。ちゃんに決めてもらえるなんて。 オレには何も言ってくれない・・・・・・。 オレには祝って欲しくない?─── ダメだ。そう、ここで暗い顔をしてはいかん。 オレはこういうのには慣れてるハズだろ? 顔を作れ〜〜〜!!! そしていつものように顔をへらりと作り上げた。 が景時に近づいて来る。 「景時さん。今日は私のお誕生日だから、ひとつお願いきいてもらってもいいですか?」 きくよ!何でも言って!オレに出来る事なら何でもするから!!! 言葉で言えばいいものを、オレは千切れんばかりに首を縦に振りまくった。 アホだ・・・・・・疲れたよ。 「景時さん、面白〜い!髪がぴよぴよしてるし。じゃあ・・・・・・九郎さんに内緒にして下 さいね?」 に手招きをされ、景時はに顔を近づけた。 それはが内緒話をするためにさせた事。 ちゃんの手が、オレの耳に触れる。 ちゃんの唇が近づいて来た!!! うわ〜〜〜、オレ限界です。 自分の心臓の音しか聞こえません!!! それでも、ちゃんのお願いを叶えたいという気持ちが勝ったのか。 内緒のお願いを聞き取ることが出来た。 ───戦の陣の外にね、お花が咲いていたっぽいんです。デートしましょう? “でーと”って何?って思ったけど、ちゃんがオレの手を引いて天幕の外へ歩くか ら、ついついて行ってしまった。 手を引かれているんだから、そうなるんだけどね。 お花が咲いている場所に行きたいんだなって。 それはわかったから、まさに内緒で陣を二人で抜け出した。 「あのね、チラッとだけ見えたんですよね。ただ、ちゃんと見えたわけじゃないから。無 かったらごめんなさい。付き合わせちゃって・・・・・・」 は真っ赤になって俯いた。 「いいんだよ〜、そんなの。それにしても、好きな花だったの?」 さり気なく探りを入れる景時。 チラッとで気づくって、そういう事だよね? 「その・・・誕生花っていうのがあって・・・・・・その花っていうか・・・・・・」 耳まで赤いが可愛らしく、景時は一緒にその花を探す事にした。 「じゃ、頑張って探そ〜〜〜。それでさ、その花はオレに摘ませてね?」 「え?」 「それをちゃんの誕生日のお祝いの品にしたい・・・かなぁ〜・・・なんてね!」 調子よく口にしたものの、実の所嫌がられた時の逃げ道を自分に用意しているだけの 景時。 「・・・う、嬉しいかも・・・・・・」 ダメだよ、ちゃん。 そんな簡単に男から花を貰う事を了承しちゃ! オレ、勘違いしちゃうよ? 文だの花だの女性に贈るっていう事はさ。 好意を持ってますって意味なんだから。 しかも『嬉しい』なんて言われたら、オレは確実に勘違いするよ? 手まで繋いでるこの状態で、『お兄ちゃん』とか言われたら。 もう立ち直れない・・・・・・。神様、助けて! 会話が途切れたまま、景時とは土手の辺りまで歩いてきた。 「あ!やっぱりそうだ」 手を離して駆け出すの後を視線で追うと、シロツメクサの群れの他に、白い花を つけるモノが風に揺れていた。 「鈴蘭・・・か・・・・・・」 真っ白なその花は、風に吹かれて揺ら揺らと花を鈴のように揺らす。 「景時さん。これなの、私の誕生花。スズラン!」 しゃがんでスズランを指差すの隣に景時も腰を下ろした。 「そっか〜、これね。ほんと、ちゃんぽいね」 数本を根元から摘み取り、小さく束にするとに手渡す。 「はい。・・・お誕生日、おめでとう!ちゃん」 「ありがとう!景時さん」 が景時に微笑みかける。 景時の中で、何かが弾けとんだ。 「ちゃんっ!」 手を握り拳にして、突然景時が立ち上がる。 「は、はいっ!」 つられても立ち上がった。 「今日は君の誕生日で・・・もしかしたら嫌かもしれないけど・・・・・・」 「・・・・・・なんですか?」 景時の行動の意味がまったく理解出来ていないは、のんびりと首を傾げる。 「オレはちゃんが好きですっ」 「ひゃっ!」 を抱きしめる景時。は手にしていたスズランを落としてしまった。 「・・・私も・・・景時さんが好きです。だから、ほんとは景時さんに祝ってもらいたかったの」 「ほ、ほ、ほ、ほんとに?!」 黙って頷くをさらにきつく抱きしめる景時。声はかなり裏返っていた。 スズランの花言葉は、清らかな愛。 への贈り物は、景時の真実の言葉になった。 |
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あとがき:何かがきまらないのが景時くんなイメージでして(汗)見た目とのギャップがたまらんのですv (2005.6.16サイト掲載)