一月生まれの貴女へ





 ぺたり───

 そりゃあ、こんなデカイ男が。
 ジュエリーショップで。
 ショーケースにへばり付いていたら不気味だろうね。
 遠巻きにオレを眺めるだけで、店員さんたちは誰も声をかけてこない。


(ま!いいけど。それにしても、これ・・・いいよなぁ〜〜〜)


 ぺたり───


 一度離れたものの、再び元の姿勢に戻る。
 ガーネットという宝石が、楕円形にカットされている。
 しかも、それがぐるりと六個で花の形になってるんだ。
 そんなトップがついたペンダント・ネックレス。


ちゃんに、きっと似合う。むふふ・・・・・・)


 変な笑いが零れてしまった。
 いや、いや、いや!
 べ、別にコレをつけている胸元を想像したわけじゃ・・・・・・。
 これには深い理由があるんだな!
 ちゃんの誕生日だからさ。
 誕生石という知識を仕入れたからには、さり気なく・・・こう。
 格好よく渡したいわけなんだよ、オレとしてはさ。


(ピアスもあるんだ・・・・・・でも、ちゃんはまだピアスにしてないよな?)


 『あのね、卒業したらピアスしたいの。別に皆はしてるんだけど・・・節目に!』


 三月には卒業だよね〜〜〜。
 その時には、また別に卒業祝いと・・・・・・婚約指輪も用意するけど。
 なんなら今でもいいよな〜。
 
 ガーネットと名のつくものはすべてチェックした。
 色合いが様々なんだよな〜。
 でも・・・この一番赤いアルマンダイン・ガーネットがいい。
 これで指輪ないかなぁ・・・・・・。


 一番近くにいた店員さんと視線を合わせてみる。
 ん?逸らしちゃ負け〜って、ソレ違うし!こっち来てよ!!!
 仕方が無いので、指でケースの中を差す。
 どうだ!買うんだぞ〜、コレを。来てくれる?

「お決まりですか?」

 プロだね。何事もなかった様だよ、その口調。

「あの・・・これで指輪とかってないですか?これとこれは同じデザインですよね?
これで指輪も欲しいんです」
 やや“指輪”を強調して言ってみる。

「申し訳ございません。最初からペンダントとピアスしかないデザインでして・・・・・・」

 指輪がぁ!
 そこが重要なのに・・・この運のなさがオレらしいともいえる。

「あの・・・似たようなのでしたら・・・・・・お花があります」
「そ、それ!それ・・・見せて下さい!!!」

 とはいうものの、思っていたデザインではなかった。
 花弁がダイヤで中心がガーネット。逆だろ〜、花なら。頼むよ、ほんと。

「・・・お客様?」
「・・・・・・無いならいいです。揃ってないと意味が無いんです・・・・・・」

 あからさまに落胆しながら店を出ようとするオレを引き止める声。

「あの・・・ご予算によってはご用意出来ますが・・・・・・エンゲージリングのプラチナ台で
したら・・・あるにはあるんです」
 おおっ?!
「そ、それっ!それで!」

 出された指輪は、可愛らしい花の隣に小さなダイヤが雫のようについていた。
「これ・・・同じデザインですよね?」
「ええ。でも・・・プラチナとダイヤですので、お値段が大分変わりますから。店頭には
出しておりません」

 そんなのオレには関係ない。全部買ったぞ、全部。
 当日までに、練習しなきゃなぁ。



 誕生日おめでとう、ちゃん。
 誕生日のプレゼントは、このネックレスとピアスです。
 それと・・・オレのお嫁さんになって下さいっ!
 ───ここで指輪を出すという段取り。


 どうかな〜。完璧?


 何度も口の中で練習する。
 誕生日おめでとう、ちゃん───






Copyright © 2005- 〜Heavenly Blue〜 氷輪  All rights reserved.


 あとがき:和名が『ざくろ石』というのが、一番よく色を表している気がします。宝石言葉は『真実』などがあります。     (2005.12.29サイト掲載)




こっそりお誕生日企画メニューページへもどる