○
○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
○ |
title Halloween 2006 page No. 001
「・・・したいの?」
「はい。楽しそうですよ?そういうの」
とある日のベルナールと。
お隣さんだけあって、登下校が同じくなる事が多い。
ベルナールはを守っているつもりだ。
自分以外の異性は排除する方針。
一方のは、仄かな恋心を抱きつつ、
恋に憧れているレベルを超えてはいない幼さ。
いつまで経っても変わらないままの二人が、10月の
中旬にした会話の一部が先ほどもの。
「で?どうしたら、こういう事に?」
ベルナールが厭きれた視線で問いかけた。
「貴方が言ったんですよ?ハロウィーンをしなくてはと」
さらりと言い返すのはニクス。
「それは言ったけど!!!意味が・・・・・・」
机に手をついて立ち上がるベルナール。
「まあ、まあ。いいじゃないですか。お菓子部も協力します
よ?俺たちの出番って感じで嬉しいな」
お茶を淹れてきたジェイドが仲裁に入る。
「・・・校内の風紀が乱れる」
「そうでもないですよ。時々は羽目を外させるのが、人心
を掌握するのにいいものです」
サラリと政治家の様なセリフを事も無げに述べるニクス。
「・・・わかった。生徒会の決定ならば従うまでだ」
ヒュウガとて仕事の建前で言ったのだ。
何故ならば、ここにいる全員がを喜ばせた
いという共通の目的を持っているから。
事の始まりは、ベルナールの自慢話まで遡る。
『お家でハロウィーンをしてみませんか?』
『いいね。それじゃあ・・・家へどうぞ?お菓子を用意
して待ってるから』
『嬉しい!何か仮装しないといけないですよね』
『可愛い魔女の格好はどう?』
『兄さんは?』
『狼男かな〜?』
『・・・・・・顔は変えない範囲にして下さいね?』
そんな遣り取りをし、一緒にハロウィーンをすることを
うっかり生徒会室で話してしまったのだ。
「いいじゃないか。楽しい行事が増えるのは。学校だって
予算回してくれるんだろう?」
めったに生徒会の会合に出てこないレインまでもが
加わっている。
「そうだね。それとも・・・何か不都合でもあるんだ。
二人っきりでハロウィーンをしようと思っていたとか?」
ズバリとルネに言い当てられたベルナール。
の姿を他の男には見せたくない。
「ともかく。これは決定事項ですから、新聞部での報道と
当日の分担と協力要請を至急決めますよ。根回しは済んで
いますからもめる事はないでしょうが」
ニクスの言葉通り準備は滞りなく進み、当日を迎える
事になった。
十月最後の日、万聖節の祭りを学ぶ一環として、午後の
授業はなくなり、かぼちゃのスイーツが並ぶお茶会と
文化部の活動のお披露目会となった。
学園祭は近年では遊びの要素が高く、文化部の活動は謎に
包まれている部分もある。
また、華やかな運動部と違って、予算も厳しい文化部の
ために、お菓子部はお茶会のリード役で、写真部はお手製の
案内状など、部費の助成の意味も込めた活動推奨がされている。
「思ったより上手くいきそうですね?」
「まあね。中庭で演奏会までしているし。学校側も生徒の
団結に悪い顔はしないし、各部も部費が増えて大喜び。
楽しくない人がいないんだから成功するだろうなぁ」
「・・・若干一名、楽しくない人物がいそうですがね。私は
学園長にお届けモノをしなくてはならないので失礼しますよ」
立ち去るニクスの後ろ姿を目で追うと、お茶会の会場で
張り切ってかぼちゃのクッキーを売っているの
前に立ち、そのまま二人で奥へと消えてしまった。
「楽しくないのは僕って事かな?ほ〜んと。切れ者の生徒会長
さんだよな。さて、さて。お茶会の記事を書かないと」
人混みの中へと紛れ込み、インタビューを始めた。
ジェイドによって用意されたスペシャルセットをトレーに
のせて、ニクスと共に学園長室を訪れる。
「彼女が企画の案を出してくれました。これは、下のお茶会で
出しているものです」
ニクスの言葉で学園長の前に淹れたての紅茶とスイーツが
のったトレーをが置いた。
「クラブ活動の?」
「ええ。お菓子部と料理部が協力してくれました。他の部も
様々な形で協力してくれています」
生徒の自主性を強調する。
「実力考査の後ですし、あまりに羽目を外しすぎるのもと思い
ましたが、騒動にはなっていないようですね」
頷きながら美味しそうにスイーツを食べ、お茶を飲む。
「騒ぐ事を主旨にしておりません。寛ぐ事、会話を楽しむ事で
リラックスしてもらい交流を深めるための企画です。
ご安心下さい」
公にはなっていないが、騒動を起こそうものなら締め出す準備
は出来ている。
「だからこそ許可をしたんですが。・・・いつになくレイン君も
協力的だったとか?」
飛び級制度があるのに使わないレインが在学しているのは、
学園の自慢でもある。多少の素行の悪さ、例えば、遅刻や授業中の
居眠りは見逃しているが、同学年との交流が出来るのだろうかと
危惧していたのだ。
「予算をいただけたので無料でもと思ったのですが、多少なりとも
料金をいただくのは、売るほうも買うほうも緊張が生まれていい
のではと言われまして。結果は確かにその通りでした」
作る方は予算は使えるものだと手抜きする。
食べる方も無料なのだからといい加減な事をする。
しかし、金銭の授受が発生すると話は別だ。
売る側はよりよい商品の提供を迫られ、買う方は自分の懐と
相談し、必要なモノだけに絞ってくるだろう。
『需要と供給バランスと、来年の傾向のリサーチまで売上から
判定できるだろうし?予算以上に使ったって、いいものだしてりゃ
商売になるって。売れれば自信にもなるしな』
実際、レインの考え通りに事が運んでいた。
「あの・・・今日はお菓子部を手伝ってくれています」
「そのようですね」
レインがウエイターになっているエリアは、何故か女生徒が多い。
二階にある学園長室から、中庭の様子がよく見える。
「これも、大変美味しかったです。さ!あなた方も早く戻って
楽しまないと!」
「はい!」
「ありがとうございます。失礼します」
学園長への報告もそこそこに会場へ戻ると、笑い声があたりに
響いている。
「みんな・・・楽しそうですよね」
「ええ。貴女がベルナールにアイデアを持ちかけて下さったおかげ
ですね」
「そんなこと・・・偶然読んだ本にあったからです」
クリスマスを堂々と誘うほどの勇気は無い。
それでいて、楽しそうなことをしてみたかったのだ。
話は大きくなってしまったが、皆で何かを成し遂げる達成感は
心地良いもの。
「それじゃ。そろそろジェイド先輩と交替しないと、次のお菓子が
間に合わないので。失礼します」
ぺこりと頭を下げると、足早に駆けてゆく。
「お茶に誘いそびれてしまいましたね」
「それは、僕の邪魔をしたんだから当然じゃないかな?生徒会長。
インタビューさせていただきたいのですが?」
ニクスの背後から、ペンを持った手が伸びてきた。
「今回は全員引き分け・・・ですかね?」
「そうでもないんだな〜。ほら。ジェイドとレインが一番いい
思いしていると思うけど?」
と二人でお菓子を作っているのはジェイド。
出来たお菓子やスイーツを運ぶレイン。
受け渡しはがしている。
「あっちもそれなりにいいポジションだし」
ベルナールのペン先へ視線を移せば、警備と称して
がよく見える位置に立っているのはヒュウガだ。
「ついでに、ルネは客として居続けしてるしね。僕が一番予定が
狂って可哀想な結果。これからは情報は漏らさないようにするよ」
「ふふふ。残念でしたね。ただ・・・あなたが話さずとも、彼女は
どうでしょうか?恐らく我々に話して下さると思いますが」
昼休みや放課後、誰もがを取り囲む。
は嬉しい事はすぐに話してくれる。
誰がいい思いをしても、到底秘密にはならない。
今回もベルナールが言わなくても、結局はバレていただろう。
「参った!その通りだよ・・・・・・」
額に手を当て、ベルナールが溜息を吐く。
「まだスタートラインに立っているだけで、まったく進んでいない
のですが・・・先はわかりませんからね」
二人が立ち話をしているのを見つけたらしい。
が小走りに近づいてくる。
「あの・・・これ・・・私が作ったんです。お二人とも、お仕事が
忙しくて食べる時間がないと思って」
クッキーが入った袋を手渡される。
「ありがとうございます」
「ありがとう、」
秋晴れのハロウィーンは、誰もが進展なく終了した。
2006.11.29
ちょっど一ヶ月遅れでいいかなと(笑)
|